アンバランスロマンス(緑)

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「村瀬先輩っ、あの・・・
私、今日どうしても外せない用事があってぇ」



イラつく後輩の用事、知ってる。
広告代理店のイケメンと合コンだって昼休みのトイレで聞こえてた。



「いいよ、もう。私がやっとくから」

「いいんですかぁ？ありがとうございます！」



なんて可愛く言うくせに。
村瀬先輩に頼めば大丈夫。
あの人、金曜の夜に一緒に過ごす人いないんだから。
って、笑いながら言ってたのもちゃーんと知ってるから。



「来週、たーっぷり仕事あるから定時で帰れると思わないでね」



嫌味たっぷりに言ってやったら、後輩は引きつった笑顔で帰っていって。



「A、今のめっちゃ怖いって」



入れ替わりでやってきた大倉が笑いながら左隣の席に座った。



「聞いてたなら話早いね。まだ仕事終わんない」

「じゃ、ここで待っとく」

「ヤスくんと先に行ってていいのに」

「んー、ヤスもまだ終わらんて言うし」



私が異業種交流会に行かなくなった金曜日。
毎週、とまではいかないけど大倉とヤスくんと3人で。
私たちは相変わらず焼き鳥屋でお酒を飲んで、喋って、笑ってる。



「ヤス、メシ食うたらまた会社戻るって」



隣の席でヤスくんとメッセージのやり取りをしてた大倉が、スマホの上で指を止めた。



「そうなの？ヤスくん、仕事忙しいんだね」

「・・・ちゃうやん」

「何が？」

「ヤスなりに気ぃ遣ってくれとるって事やん」


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