恋泥棒(緑) 5

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信号が青に変わる直前に短いキスを落とす。



「大倉さんっ！」

「ええやん、夜やから誰にも見えてないって」

「そんなことばっかり考えてるんですかっ」



付き合い始めやし帰り道くらい紳士のつもりやったのにな。



結局、オレはそんなことばっか考えとるし。
やっぱりところ構わず手ぇ出す男やったわ。



「そうやで？ でもそんなオトコを好きになったの木村さんやろ」

「・・・・・」

「それに昼間のあれだけでオレが満足したと思ってんのやったら大間違いやで？」



部長の着信に邪魔されながらのキスなんて。
誰か来るかもしれん会議室でのキスなんて。



まぁそれはそれでスリルがあったのは否定せんけど夢中になったかと言われれば微妙、ってのが本音なワケで。



「あっ、信号変わっちゃうから」



渡らなきゃ、って木村あやはオレの視線から逃げるようにして点滅し始めた横断歩道を気にしとるけど。



「何してんの、もう赤になるって」



繋いだ手に力入れて引き止めると困ったような顔してこっちを見て、また視線を逸らす。



歩行者信号が青になるまで、あと60秒。



「・・・今日はこれでおしまい」



触れるだけの短いキスをして。
繋いだ手を指先を絡めて握り直して。
予想外の展開に拍子抜けしてる顔をのぞき込んで。



「オレとおるのに安田の話した罰」

「もう二度と帰りを待ったりしませんから」



でも駅まではちゃんと手を繋いで帰った、恋人1日目。

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