君こそ、すべて(緑・短編) #4

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｢大倉も経験ない？抱き心地の悪い女｣



30分も寝たんかどうか、くらいの時間で目を開けたAはオレの体に巻き付けてた手を解くとさっぱりした口調でそんな事を聞く。



「気持ちいいコトした後に抱き心地が悪いって最悪じゃない？痩せてるとか太ってるとかじゃなくて、それこそ相性っていうか」

「……何の話やねん」

「その時は気が付かないけど終わって冷静になった途端に冷めちゃうような女っていない？」



なんてオレの顔をのぞき込むAはどんな返事を期待してんのかな。



「仮にオレにそういう相手がおったとしたら、抱き枕みたいな女を決めとけって事？」

「そういうんじゃなくて、肉体的な満足と精神的な満足は別って話」



誰かと付き合うって両方満たされるものだと思ってたけど何か違うんだよね、とAは指を折って今までの彼氏を数え出すからオレも頭ん中に元カノを思い浮かべてみるものの



「A？」



いつもなら少し寝たらオレの気持ちなどお構い無しに離れていくのに今夜は一度離れたAの指先がまたオレの体に触れるから。



「……精神的な満足、まだ足らんの？」



冷静を装って答えながら誘われるようにオレの手もAに伸びてベッドの上のふたりは服を着たまま恋人みたいになる。



「どうかな」



俺の胸元に顔をうずめてAが意味深に笑うから、その髪を撫でながら今度はオレがAと足を絡めて逃げられんようにして。



「……試してみる？」

「試す？」

「もうひとつの、満足」



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