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頭を触られる感覚に目が覚める。視界はぼやけていて、体が重たければ熱い。


「・・・・・A、」


小さな手で俺の手を握り、覗いてくる顔が心配そうに眉を下げている。目を触れば涙が出ている。あんな事を夢に見たせいだ。


『さーとお兄ちゃんさみしい?』

「は?」


夢のせいで子どもの言うことなのに思わず手を払ってしまう。
驚いた顔をして俺を見る。泣くだろうな、という予想とは反対にAは恐る恐る指に触れるとまた、握って来る。


『私ね、お熱が出た時おじちゃんがいないとさみしいの。さーとお兄ちゃんもさみしいでしょ?だから私がいっしょにいてあげる。
それとね、泣きたい時は泣いてもいいんだよ。おじちゃんはねこうやってなでなでしてくれるの。だから私もね元気になってねってなでなでするの。』


俺よりも小さくて、弱いはずなのに、握られる手も撫でてくる手も温かい。


「っ、」

『さーとお兄ちゃん元気になってね。私が居るからさみしくないよ。』


視界が滲む。これは熱のせいで、あんな夢を見たせいでこうなっているだけだ。Aの手が少し震える。滲む視界で見ると今にも泣きそうな顔をしている。


『さーとお兄ちゃんねんねしてる時死んだほーがって言ってたよ。ダメなんだよ。悪い言葉なんだよ。
さーとお兄ちゃん、死んじゃうの?』


ぼろぼろと泣き始める。死なないで、私が居るから、ここにいて、そう声を上げる。
俺の為に泣いてくれているのだ。この小さな体で。


「大丈夫、死なないから、俺はここにいる」


抱き寄せ、胸の中で泣いてくれるAにつられて俺も泣いた。
泣くなんて事は今まで無かったわけじゃない。でもそれはいつしか年齢が上がる毎に俺の中で乾いて無くなったものだと思っていた。捨て去った感情だった。


「生きるから」


この子が俺の無くしたものを小さな手で拾い上げてくれたんだ。捨てないで、そう言って俺の手に乗せてくれた。





七海が帰って来てから直ぐに病院に行った。
熱は上がっていて点滴を打たれ、薬を処方された。夢現になりながら、帰りの車内で七海とAの話している会話を聞いた。


『さーとお兄ちゃん元気になる?』

「なりますよ。お医者様がお薬を処方してくれましたから。大丈夫です。」

『なおったらまた、遊んでくれるかな?』

「それは聞いてみないと分かりませんね。」


いっぱい遊ぼう。口には出なかった答えを頭の中で何回も返した。

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とろろ芋太(プロフ) - シシマチさん» コメント返信遅くなってしまってすみません。更新ゆっくりですがよろしくお願いいたします。 (2021年7月15日 12時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - ヤクザパロとかあんまり見ないのですが、とっても面白かったです!更新頑張ってください! (2021年7月7日 14時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
とろろ芋太(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。まだ考えてませんが、頑張ります。よろしくお願いします! (2021年6月4日 19時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年6月1日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とろろ芋太 | 作成日時:2021年5月23日 10時

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