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夏休みになった。
親父には謹慎という名の追い出しをされてから二月近く経った。元々帰りたくない家だから良いものの。今帰って来いと言われる方が嫌だ。
ここが楽しいから。
『・・・』
「? どうしたー?」
俺の顔をじっと見つめてくるA。
今日は七海が居ない休みの日だ。遊んで欲しいのかな?としゃがんで見れば額を触られる。しばらくじっと手を当てて離すとリビングの方へ消えて行く。
ガチャガチャと物音がする。またぺたぺたと戻ってくる。
『さーとお兄ちゃん、これして。』
「体温計、俺熱ないよ。」
『して』
むっと顔を膨らませる。これは聞かないと暴れるやつだな。とつんつん、と膨らんだ頬をつつきながら体温計を脇に差す。
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ
数秒で鳴った体温計を見ると38.5度の熱。そんな感じは全く無いのになんでだ?俺が疑問に思う前に、体温計を覗いてきたAはバタバタと出て行く。
リビングから聞こえる声。多分七海に連絡してる。
『さーとお兄ちゃん、寝んねしよ。』
「大丈夫だって。多分壊れてる。俺体調どこも悪くないよ?」
『・・・』
「ほらほら、膨らませてると爆発するよ?」
また出て行くと手鏡を手に戻って来る。
『んっ!!』
向けられた鏡に写る俺は真っ赤だ。耳まで赤くなっている。そこでぱっとエアコンを見る。点いている。少しばかり暑いなって思っていたのはこれのせいか。
「分かった。寝るから、向こうの部屋に行った方が良いよ。夏風邪かもだし。」
『・・・わかった』
ドアが閉められるのを確認してから布団に入る。心做しか寒気がしてくる。目を瞑ればすっと眠りに入った。
「五条ってあのヤクザのお家の?」
「悟くんのお家って犯罪者の集まりなんでしょ?」
「五条って気持ち悪いよなあの目」
「化け物だろ」
「なんで生きてんの」
「犯罪者が」
「居るだけで迷惑」
俺が何したっての?お前らに何かしたか?居るだけで煙たがられ、家に居ても馴れ馴れしい下っ端の奴らにうんざりする。
俺のことも知らない癖に、俺の事を見ない癖に、偉そうに言いやがって。
「宝の持ち腐れだな。その眼はお飾りか」
うるせぇよ。俺はこんなの要らないのに勝手に付いてきた物なのに、なんでっ、なんで取れねーの?
なんでっ俺の事をそんなに否定する?
「死ねばいいのに」
俺は死んだ方が良いのか?居なくなった方がいいのか?
俺はただ・・・
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とろろ芋太(プロフ) - シシマチさん» コメント返信遅くなってしまってすみません。更新ゆっくりですがよろしくお願いいたします。 (2021年7月15日 12時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - ヤクザパロとかあんまり見ないのですが、とっても面白かったです!更新頑張ってください! (2021年7月7日 14時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
とろろ芋太(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。まだ考えてませんが、頑張ります。よろしくお願いします! (2021年6月4日 19時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年6月1日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とろろ芋太 | 作成日時:2021年5月23日 10時