ギョンス君は沼でした。3 (ページ8)

今日:19 hit、昨日:4 hit、合計:481,696 hit

彼女の居ない年越しページ8

【D.O. SIDE】

今年もあと数分で終わり新しい年になる

テレビの中はカウントダウンに浮かれた人たちが

くだらない事をして笑いを取っている

そんな騒がしいテレビを僕はただぼーっと見つめていた

去年のカウントダウンは隣に彼女が居た

とても幸せな時間で

年甲斐もなく12時丁度にキスなんてしたり

腕の中で眠る彼女のやわらかい髪に触れ

腕に包むと暖かくて安心する香りがして

この世で一番幸せなのは僕なんだと思っていた

一年後の今日僕の隣に彼女は居ない

きっとまだ仕事をしている

携帯を覗き込んでも真っ暗で

彼女からの連絡は無かった

今彼女の傍にいるのはルハンさん

二人の距離が明らかに縮んでいるのは目に見えてわかった

もしかしたら彼女の気持ちも彼に向いてしまってるかもしれない

仕事が出来て、彼女を良く理解していて

僕みたいにこんな女々しい嫉妬なんてしていないんだろう

ベッドにドサッと仰向けになり

蛍光灯のまぶしさを腕で遮った

目を閉じると彼女の顔が浮かぶ

綺麗な髪をなびかせ

優しい顔で僕の名前を呼ぶんだ

会いたい

Aに会いたい

触れたくて

体温を感じたくて

せめて声だけでも聴きたい

今電話したらだめかな

仕事の邪魔はしたくない

僕の欲求ばかりを押し付けたくなくて

携帯に伸ばそうとした手を引込めた

騒がしいテレビを消して

部屋の電気も消し

闇の中目を開ける

暗闇に目が慣れてきて次第に見える天井

隣に誰も居なくて

シーツの冷たさが手に伝わった

その時枕元にある携帯が揺れる

心臓がドキリとした

携帯の画面には愛しい彼女の名前

起き上がり急いで通話のボタンを押す

「もしもし？」

『あ、ギョンス？起きてた？』

「はい。まだ仕事？」

『うん。』

「そうですか。」

『でもね、もうすぐ終わるの。』

「そっか。」

『年明けまで…あと何分？』

そんな問いかけに時計を見ると23時58分

「あと2分。」

『よかった間に合って。』

「ん？」

『ギョンスと一緒に年越ししたかったから抜けてきちゃった。』

そんな可愛い事を言うもんだから自然と頬が緩んだ

テレビを付けて正確な時間を確認する

今年も残す所あと1分もない

『今年も大変おせわになりました。』

「こちらこそ。お世話になりました。」

テレビから聞こえる10秒前のカウントダウン

『あ、あと7秒！』

「5、4…」

『3、2、1…』

彼女は隣に居なかったけど

新しい年を彼女の声を聞いて迎えた