ギョンス君は沼でした。 (ページ33)

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信号は青ページ33

最寄駅に着き改札を抜ける

楽しい時間は過ぎるのが早く

ついさっきここで待ち合わせした感じがした

ギョンス君とはここでお別れ

かと思っていたら彼はそのまま私の家の方へ向かって歩いていた

彼の家は反対側なのに

『ギョンス君？』

「はい。」

『家…逆でしょ？』

「そうですけど？」

『どこいくの？』

「デートは家に着くまでがデートですから。」

デート

そう言われて改めて今日の出来事が蘇る

「違いますか？」

『いや…でも大丈夫だよ？一人で帰れるから。』

「僕が送りたいんです。行きましょう。」

私の言葉を無視して歩き出す

送ってくれるんですか？

ゆっくりと彼の後ろを着いていくと

「それじゃ一人で帰ってるのと同じじゃないですか。はい。」

差し出された手

この手を取っていいの？

「嫌ならいいです。」

そう言ってまた歩き出した彼に駆け寄り

ぶらんと下された手を握った

「手冷たっ。」

『冷え症だからね。』

「そうなんですね。」

何を話していいかわからない

人もまばらで車の通る音しか聞こえなかった

『何だまってるの？』

「Aさんだって。」

『終わっちゃうなぁって思って。』

「同じ事考えてました。」

『楽しかった？』

「はい。すごく。Aさんは楽しかったですか？」

『色々あったけどね。』

「すみません。」

『ソラちゃんちゃんと家着いたかな…』

「あ、大丈夫だったみたいです。Aさんに謝っておいてって。」

『何もしてないのに。』

「デートの邪魔してごめんなさいって。」

『あはは。デートか。』

「デートじゃないんですか？」

『ん？』

「僕は誰とでも映画に行ったりなんてしませんよ。」

丁度信号待ちだった

隣に並んだ彼は私の顔を覗く

「Aさんと一緒に出掛けたかったから誘ったんです。」

真剣な目に吸い込まれそうになって

上手く言葉が出ない

「Aさんは誰とでもこうやって手を繋いだりするんですか？」

首を横に振ると丁度信号は青

歩き出そうとする私を引き留め

彼の胸に引き寄せられる

「Aさんが好きです。」

首元に顔を埋め抱きしめる力が強くなる

「言うか悩んだんですけど…

もう…抑えられません。」

腕が緩められ体を離される

恥ずかしさに俯く私の頬に彼の手が触れる

「こっち…向いてください。」

顔を見上げると彼は

「好きです。」

と言ってそっとキスをした