ギョンス君は沼でした。 (ページ32)

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嫌なら… ページ32

彼の腕の中は心地よく

走ってきたからなのか

それとも…

この状況にドキドキしているのか

彼の鼓動がダイレクトに伝わってきた

ゆっくりと体を離し

彼は“すみません。取り乱して。”と俯いていた

『ありがと。戻ってきてくれて。』

「え…」

『嬉しかったから…

あのまま帰ったら家で弟とカップラーメンだったよ。』

「あ…あの。」

『うん。あのシスコン。』

「あの時はすごく睨まれました。姉の何なんですか？って。笑」

『ほんとすみませんでした。』

「いえ。じゃぁ…行きましょうか。ご飯。」

『そうだね。』

歩き出そうとした時彼は私の手を握る

えっと…

この手は…

「聞かないでください。あと嫌なら振り払ってください。」

『え…』

「いいから。何も聞かないで…。

あと…今顔見ないでください。」

そんな事言われたら見たくなっちゃうでしょ？

顔を覗こうとしたら見えた真っ赤な耳

そっか

顔が真っ赤なんだね

意地悪してやろうと思ったけど

私の顔もきっと真っ赤だから

そっとしておくことにした

手を振り払うなんて選択肢は私には無かった

手に少し力を入れ握ったら

きゅっと握り返される手

久しぶりに味わうこの甘酸っぱい空気に少し眩暈がした

夕飯を食べ終え帰りの電車

休日の遅い時間はやはり混んでいた

酔っぱらっている人もいるし、結構壮絶

入口付近に乗ったと思ったのに押しに押されて連結部分まできてしまった

「Aさん平気ですか？」

『うん。なんとか。』

完全に彼にくっついている状態だった

「20分位でしたよね。」

『うん。』

「長いな。」

『うん。』

お酒が少し入っているせいか少し大胆になった彼は

向かい合って立つ私の肩に顎を乗せる

『ちょっと。』

「なんですか。」

『重いんですけど。』

「後ろの人が押すんです。」

『頭を押す人なんていません。』

「んふふ。」

むかついたので脇腹をつつくと

「ちょっ！なにするんですか！混んでる電車で！」

『仕返し。動かないでください迷惑なんで。』

俯いてるとだんだん酸素が薄くなる

苦しくなってきたので顔を上げると

彼のドアップ

唇まであと20cmの距離だった

慌てて顔を下すとクスクス笑ってる声がする

「ちゅーでもしようとしたんですか？」

と耳元で言われたので胸元を叩くとその手は彼の手に掴まり

そのままぎゅっと握られた