ギョンス君は沼でした。 (ページ31)

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幸せな街に不釣り合いな私ページ31

映画が終わり外に出ると真っ暗で

少し早いディナータイム

「何食べます？」

『んーなんでもいいけど…』

街の中を二人並んで歩いているとギョンス君を呼ぶ声がした

『誰か呼んでない？』

声のする方を見るとギョンス君と同期のソラちゃんがベンチに座っていた

『ソラ…ちゃん？』

「あいつ…何してんだ？」

SO「あ、お疲れ様です。」

『お疲れ様です…』

「何してんの？こんな所で。」

SO「ちょっと眩暈がして…」

「大丈夫？」

SO「だいぶ良くなったんだけど

ちょっとまだ…」

『ギョンス君送ってあげたら？』

「え…」

SO「お二人の邪魔しちゃ悪いんで…」

『大丈夫だよ。具合悪いんでしょ？』

「Aさんは…」

『私？私は帰るよ。』

「送ってくるので待っててください。」

『私の事なら気にしないで。』

SO「すみません。」

『大丈夫だよ。ギョンス君ちゃんと送ってあげてね。じゃぁ…』

「Aさん！」

後ろは振り返りたくなかった

行かないで。なんて言える立場じゃないし

具合の悪い人をほっとくほど腐ってはいない

でも…ちょっと辛いかも

もう少し一緒に居たかったな

駅に向かいゆっくりと歩く

12月の街は明るく、カップルたちが寄り添っていた

今日の為にパックしたり、洋服を買ったり

浮足立っていた私は滑稽で

今の幸せそうな街には不釣り合いだった

駅前には沢山の人、その雑踏の中に紛れ改札を通ろうとした時

私は誰かに腕を掴まれた

驚いて後ろを振り返ると

滝のような汗を流したギョンス君だった

『えっ…ちょっとちゃんと送ってきたの？』

彼は走って来たのか肩で息をしていた

私の腕を掴んだまま人ごみから抜け出す

「何で帰るんですか。」

『だって、ソラちゃん…』

「なんで…居なくなったりするんですか。」

『ちゃんと送ってあげたの？置いてきちゃったの？』

「あいつはタクシーに乗せました。」

『え？家まで行かなかったの？』

「なんで僕が行かなきゃいけなんですか。」

『だって具合悪いんだよ？』

「ちゃんとタクシーには乗せました。たとえあいつの家に送ってったとしても

何もしてやれませんし。それにAさんはどうなるんですか？」

『私はただ家に帰るだけ…』

「僕は今日Aさんとここに来たんです。

Aさんが最優先なんです。一人で帰すことはできません。」

その言葉と同時に彼の胸に引き寄せられ

「帰っちゃダメです。」

そう彼は小さな声で言った