ギョンス君は沼でした。 (ページ30)

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並ぶの嫌なんでページ30

約束した週末はあっという間にやってきた

この日の為に洋服を買いに行ったのは内緒

前日にパックだってした

ジョンインに怪しまれたけどニナと遊びに行くと嘘をついた

だってギョンス君と映画に行くなんていったら…どうなる事やら

待ち合わせ時間の15分前

ちょっと早く着いてしまったかな…

なんて辺りをキョロキョロしていたら

来た道と反対側からギョンス君が歩いてきた

あ、そうか…今日は私服だ…

雰囲気がまったく違って胸が高鳴った

「お待たせしました。」

『ううん。まだ待ち合わせの時間より全然早いよ。』

「楽しみ過ぎて早く着いちゃったんですか？」

『ち、違うってば。たまたま早く準備が出来たの…』

「僕は楽しみにしてましたけどね。」

『え…』

「さぁ行きましょう。」

スタスタと私を置いて改札を抜けるギョンス君

『ちょっと！まってよ！』

その後ろ姿を追うと途中で振り返って笑っていた

電車に乗って映画館へ向かう

事前にネットで予約してくれていたようで長蛇の列に並ばずに済むようだ

『色々ありがとね。』

「いや、並ぶの嫌なんで。」

『あ、お金…』

「いや、大丈夫です。僕が誘ったんで。」

『ダメだよ。ちゃんと払う。』

「いいんです。プレゼンの時お世話になったのでお礼です。」

『何もしてないよ…』

「Aさんに沢山助けてもらいましたから。

ね。この位出させてください。」

『うん…』

売店で飲み物を買い、彼が好きだと言ったナチョも。

チーズソースが決め手なんです。ってソースをたっぷり追加した

薄暗い映画館に並んで座る

思いのほか近くてなんだか緊張してしまう

映画の内容は悲恋だった

とても儚くとても悲しいお話

終わった頃にはボロボロと大粒の涙

エンドロールが流れ出した時

ふと彼の顔が近づく

そして泣いている私の顔を見てふふっと笑うので

足を叩いた

まだ面白そうに私の顔を見ているので顔を背けようとした時だった

私の頬に彼の手が触れ涙を拭われる

「泣きすぎ。」

そう笑ってスクリーンに視線を戻す

あわてて握っていたタオルで目元を拭う

映画の内容なんてどこかへ吹き飛んでしまった

鼓動が早くなり、ギョンス君に聞こえてしまいそう

そしてこの赤くなった顔も

お願い。まだ…明るくならないで…