年下男の育て方 (ページ10)

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ポケットの中《The Past Day》ページ10

二人並んで歩く道

ここを歩くのは何度目だろうか

初めて一緒に歩いた日はほんのり暖かかったのに

すっかり季節が変わっていた

「寒いね。」

『さすがに夜はね。』

「出会って…けっこう経つよね？」

『うん。』

「ここでセミ蹴ったよね。」

『そうそう。セミほんと嫌い…』

「あれにはほんと驚いた。」

相変わらずくだらない話

敬語からタメ口に変わり

少しは距離が縮んだ私たち

もっと縮めたいと思ってしまう私は欲張りなのかな

『あー寒い。』

信号待ち

手をさすりながら

赤い信号を眺めていた

「ん。」

差し出された手

これは…

「俺の手あったかいよ。」

『え…』

「ほら。貸して。」

私の手を取る彼

その大きな手は本当に暖かくて

私の顔まで赤く染める

「ヌナ手冷たすぎ。」

私の手はそのまま彼のパーカーのポケットへ

「あったかい？」

『ん。』

「照れてるの？」

『照れてない。』

「可愛いねヌナは。」

『馬鹿にしてるでしょ。』

「してないよ。かわいいと思ったから言ったの。」

『まったくモテる男は。』

「そんなことないって。」

私のマンションが見えてきた

今日もこれでお別れ

まだ…別れたくない…かも

でもそんな事言える立場じゃないし

ゆっくりと近づいてくる別れの時間

「ヌナ。」

『ん？』

「俺さもう一つ言わなきゃいけない事ある。」

『何？』

「卒業したいんだけど。」

『え？』

「ヌナの可愛い弟ポジション。」

彼が突然立ち止まる

必然的に私も止まると繋がれていた手がぎゅっと握られた

「俺…Aが好き。」

まっすぐな瞳で私を見つめる彼はいつもの可愛いチャニョル君ではなかった

「ひとめぼれなんてないと思ってた。

でも俺は出会った時からずっと気になってて。

ジウヒョンと仲がいいのに嫉妬もした。

一緒に出掛けたりご飯食べたり…

ずっと一緒にいたいって思ってる。

今もまだ別れたくないし。

ヌナは俺の事弟みたいにしか思ってないかもしれないけど

俺はヌナを一人の女性として好きだから。」

チャニョル君は私の事が好きなの？

仲のいいヌナとしてではなく？

返事はもう決まってる

でもどうしてこんなに言葉が出ないんだろう

私…年上だよ？いいの？

繋いだ手が離されて私の髪に触れる

「ごめん。困らせて。返事はいつでもいいから。じゃぁ、おやすみ。」

いつも必ず振り返るのに振り向かない

広い背中が少しずつ遠くなっていった