ライト・ムーン (ページ1)

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00.午後4時52分ページ1

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人の第一印象なんて当たり障りのない表面的なものだ。

「服のセンスありえない。」とか、
「顔はすごいイケメンなのに、背低っ。」とか。

けれど、その〝印象〟は回数を追うごとにプラス面にもマイナス面にも広がっていく。

そう思っていた。アイツに会うまでは。

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【チーズケーキ専門店Cafe W-06】

私は2ヶ月前、やっとの思いで夢だったチーズケーキ専門店の小さなカフェを表参道にオープンさせた。

オープンから数週間は大盛況だったものの、さすがは激戦区。

日を重ねるごとに客は1人また1人と減っていく。

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ふと時計を見ると午後4時36分。

世間はまだギリギリおやつの時間といえそうなのに15席分ある店内の椅子はまばらにしか埋まっていない。

「はあ。」

と何度目かわからない溜息をつく。
それと同時にもうすぐ不思議な常連さんがやって来る時間だ。

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午後4時52分。

カラン。

ドアが開き、1人の男が入ってくる。

やっぱり。

「いらっしゃいませ。」

今日も来た。

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男は毎日、この時間になるとパソコンを持って店にやってくる。

しかし、毎回帽子を深くかぶっていて、背中を丸めてリュックサックを背負い、斜め下を見ている。

カフェの雰囲気を楽しんでいるようにも思えないこの男は一体何者なのだろう。

そんなことを考えながらこの人の特等席となりつつある、窓際の左から2番目の席に案内する。

「昨日と同じのください。」

席につくと男はぼそっと言った。

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プレーンのチーズケーキ1個とブラックのコーヒーにシュガースティック2本。

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これが私の知る彼の〝印象〟の全て。