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9回を任された大勢は、死球を出すなどピンチの場面はあったものの、無難に切り抜けた。裏の日本の攻撃、メキシコと一点差である。ここでなんとか点を稼ぎたい日本、先頭の打順は大谷だった。
初球を叩き、右中間二塁打で出塁した。その際自らのヘルメットを投げ捨て塁上で吠える。そんな大谷の姿にますます会場は熱くなり、それはベンチも同様だった。
「……」
中野「めっちゃ大谷さんの事見るじゃん」
「…うん」
中野「……素直なの珍しい」
「やっぱりあの人見ると調子が狂うんだよねぇ…」
中野「それほどAが大谷さんに影響されてるって事じゃない？」
「ヤな影響力だな」
＿＿あそこまで自分は熱くなれるだろうか。もちろん優勝したい気持ちは同じだが、大谷のように鼓舞なんて出来ないだろう。そもそも自分が鼓舞したところで逆に士気が低下しそうだ。
「！」
ふと大谷と目が合う。息を切らしながらも如月を数秒見つめ、大谷は小さく片目を瞑ってみせた。
中野「うぉ、ウインク」
「……なんなんあの人」
次の吉田はフォアボールを選び一塁に出塁。代走に周東が送られ、村上が打席に立った。逆転のチャンスだ。如月は中野の隣で静かに打席を見守った。そして＿＿。
「お」
中野「打った！！！」
打球は高く上がる。ベンチから飛び出る選手たち。腕をグルグルと回し三塁コーチがたくさん生まれる。如月も中野に無理やり引っ張られる形でベンチを出ていた。大谷が帰り、周東も目を引く速さでホームへ生還する。そして仲間たちに迎えられた村上が、雄叫びを上げながら戻ってきた。
劇的な逆転サヨナラ勝ち。表情は変わらないものの、珍しく如月の心臓もいつもより激しく動いていた。
村上、と声をかけるがたくさんの人に揉みくちゃにされている。不振から解放された村上の顔は今にも泣きそうだった。佐々木と山本にスポーツドリンクをかけられずぶ濡れになっている。そんな姿を離れたところで見つめていた。
大谷「A」
「おーたにさん」
思い切り抱きしめられる。土まみれのユニフォームを引っ張れば、大谷は笑いながら解放した。
「……やりましたね」
大谷「ホントだね。もっと嬉しそうな顔しな？」
「してますよ、十分に」
大谷「ほんとー？」
「…鳥肌がおさまりません」
大谷「……うん、俺も」
「あと一勝ですね、優勝まで」
大谷「…そうだね」
少し寂しそうな大谷。理由なんて当然知る由もなかった。
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キョンシー(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月19日 8時) (
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