その男、問題児なり (ページ41)

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その後も七回に二点を奪い、最後こそホームランを打たれ一点を取られたが、日本はイタリアに勝利することが出来た。マイアミ行きが決まり各々が喜ぶ中、如月だけは今回の試合に納得がいかない様子だった。

東京ドームから羽田空港へとバスで移動する最中も、一人黙って外を眺める。如月の隣に座る中野は今までの疲労からか、既にぐっすりと寝てしまっていた。

(……五回で崩れたな。あそこで失点さえしてなければ)

監督(岡田)にどやされる未来が見える。一人そんな事を考えながらバスに揺られた。先ほどまで賑わっていたバス内は静かだ。如月の前の座席の湯浅と大勢も、すっかり寝てしまったようだ。夜空に散らばる星屑と同じように如月のピアスが反射する。無意識にそれを触りながら如月も目を閉じた。

暫くして羽田空港に到着し移動をする。選手たちは17日の未明、マイアミへと出国した。

湯浅「Aさん、写真撮りましょ」

「やだ」

湯浅「えーお願いしますよ、インスタに載せるだけなんで」

「余計やだ」

佐々木「俺も撮って良いですか」

「だからやだ」

湯浅「はい、撮りますね〜」

佐々木「Aさんこっち向いてください」

「お前ら耳付いてないのかよ」

飛行機内で選手たちがインスタのストーリーにあげるために幾つか写真を撮っている。如月はインスタなんてものはやってないため、怪訝そうな目でその様子を見つめていたが二人に捕まってしまった。

佐々木「Aさん、そっぽ向かないで下さい」

湯浅「ファンの人にAさんをお届けしたいんです」

「俺なんか需要ないよ。二人で撮りな」

湯浅「……わかりました」

佐々木「えっ」

写真撮ろう、そう佐々木に声をかける湯浅。動揺しながらもそれに応じ写真撮影を終えると、湯浅はガッチリと如月の腕を掴んだ。

湯浅「はい。二人で撮りました。今度は三人で撮りましょう」

「京己お前、」

湯浅「Aさんと長くいると、Aさんに似てきちゃうんですよね〜。Aさんも俺と同じ立場だったら、絶対同じ事言ってますよね？」

「……一枚だけね」

佐々木「ありがとうございます！」

湯浅「やった！ありがとうございます」

嬉しそうに携帯を構える二人に何だかどうでも良くなってしまった。適当にピースをしてその場を凌いだ如月は、大きな欠伸をこぼした。