その男、問題児なり (ページ39)

今日:86 hit、昨日:425 hit、合計:133,642 hit

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如月の打席にて。既にツーアウトを取られており、塁上には誰もいない。如月がホームランを放てば一点を先制する場面、この男はやって魅せた。

感触の良さや打球音、そして高く飛んだボールを見て如月は小さくほくそ笑む。バットを軽く投げ、ボールの行方を確認しつつ塁へと走る。ボールがスタンドへと入った途端、会場から湧き上がる歓声が広まった。

今大会初のホームランを放った如月は、内心喜びながらも表情を変えずに本塁まで戻った。真顔でベンチにいる選手らとハイタッチをする。流れるようなその作業、顔も見ずに手を合わせていたため、最後に待っていた大谷に手を掴まれてそのまま抱き締められた。

大谷「Aナイス！」

「ちょ、暑苦しいんですけど」

大谷「Aなら絶対やると思ってた」

「はぁ」

大谷「綺麗に当たったね」

「そーですねぇ」

もちろんホームランは誰だって嬉しい。ただ気がかりなのは村上の事だった。自信無さげなあの姿。結局村上は空振り三振に倒れ、この回は如月の一点のみだった。

二回は互いに0点で終わり。三回も得点を許す事なく好投で終わらせた。岡本の3ランなどもあり、日本は四点を先制。四回も順調に投げていた如月だったが、五回に入り本人は少し焦りを感じていた。

(球の抑えが効いてない)

最初から全力で投球していた影響で疲れが見え始めていた。イタリア打線も回を重ねる事にしぶとく食らいついている。如月の球数も増えていき、スタミナ切れに近い形だった。

二死満塁のピンチ。吉井コーチはマウンドへ行くか少し悩んだが行動を起こす事は無かった。如月の性格を考えれば来ない方が妥当だろう。静かに如月を見守る。続投した如月だったが、フレッチャーに右前に運ばれ二点を失った。そこで降板し、二番手の伊藤が登板した。

どこか不機嫌そうな如月に声をかける者はいない。ジロリと試合を見守る如月に、味方であるはずの侍ジャパンも空気が凍る。そんな空気を溶かしたのは、村上が今大会初の長打となるタイムリー二塁打を放った時だった。