その男、問題児なり (ページ37)

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オーストラリア戦から4日が過ぎ、イタリア戦当日。不動の四番だった村上が五番に、代わりに吉田が四番となった。そして韓国戦で右手を負傷した源田もショートで復帰した。

源田「俺ら負傷組もようやく復帰だね〜」

「俺はそんな重傷じゃないです」

痛々しいテーピング。本当にこんな状態で試合に挑めるのだろうか。顔に出ていたらしく、源田はふっと笑うと大丈夫だよ、と肩を叩いた。

(＿＿負けそうな時に出るとか、代打とか抑えくらいで出してほしいって言ってた俺が馬鹿みたいだ)

先頭打者をうっすら見つめながらマウンドの感覚を確かめる。何度もはめてきたグローブも、この日を今か今かと待ち望んでいたようだ。

(俺はやっぱり、ここが一番落ち着くなぁ)

小さく息を吐く。キャッチャーの甲斐は如月の醸し出す圧に思わず唾を飲み込んだ。

要求されたボールはストレート。眠気覚ましには丁度良いかもしれない。WBCとは思えない緊張感の如月は、グッと足を踏み込み渾身の一球を投げた。気合いを込めた一球。当然打者は手も出せずにそれを見送る事しか出来なかった。

大谷「……164キロ」

ダルビッシュ「……」

宇田川「……やば」

今永「えげつない…」

佐々木「やっぱ凄い…」

宮城「164キロって如月さんの自己最速じゃ…？」

大城「正直あのボール受け止められるが自信ない…」

中村「…確かに」

中野「……」

湯浅「……」

遠くに座る二人は目を合わせる。如月はあれで終わりではない。凄いのはここからだ。それを密かに知っているのは自分たちだけという優越感に浸る。如月が二人を見てきたように、二人も如月を見てきたのだ。

それは二人を除いた阪神の選手たちも同じである。

近本「＿＿もうアイツは止まらんよ」