その男、問題児なり (ページ33)

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オーストラリア戦当日。6番に岡本が入り、韓国戦で右手を負傷した源田はこの日もスタメンを外れた。ショートは中野。冗談混じりで「エラーすんなよ」と声を掛ければ、中野は複雑な表情で如月を見た。

一回。日本はヌートバーの四球、近藤の右前打でチャンスを広げていた。大谷が打席に立った瞬間、如月は瞬間的に大谷が打つことを感じ取った。初球の緩いカーブは空振り。二球目は狙いすました一振りで、看板を直撃する特大3ランで先制した。

「…ほんっとに気持ち悪い人」

山田「それ如月が言うか？」

その言葉は側にいた山田には聞こえてたらしく、呆れた声色で言葉を紡ぐ。だって、と小さく呟く如月に、山田も心底その気持ちが分かっていた。チラリと次の打者の村上を見る。普段は頼りになるその背中は、今は小さく消えそうだった。

山田「なぁ如月」

「…なんですか」

山田「如月さえ良ければ、ムネにも声かけてやってくれへんか？」

「……山田さんがその立場じゃないんですかぁ？」

山田「せやけど、如月の方がええと思う」

「俺なんかに言われたところでアイツには響きませんよ」

山田「如月に言われるからこそ、ムネに響くと思っとる」

村上を見つめる山田を真似て、如月も村上を見る。不振ばかりの村上は自分を酷く追い詰めてるだろう。気持ちは分かるが、彼にも自信を付けさせなければ。

「……最近の若い子は自分の首を絞めすぎなんだよ」

山田「……如月。お前もその一人じゃないのか？」

「！」

山田「…無理すんなよ」

頭を撫でればその手を叩かれる。予想をしていた行動に、山田は苦笑いしながら如月の方へ顔を向ければ、当の本人は耳を赤くして打席に立つ村上を見守っていた。