その男、問題児なり (ページ31)

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結果、日本は10対2でチェコを破った。次の日にチェコが韓国に敗れるか、日本がオーストラリアに勝てば準々決勝進出が決まる。デットボールによる脇腹の痛みが原因でベンチにいた如月だったが、明日からは試合に参加する欲を栗山監督に伝えていた。

当然心配はされたが大丈夫の一点張りで突き通す。試合に支障はない。それでもスタメン入りは叶わず、代打や抑えでの起用という事に決まった。本来ならば如月自身がそれを願っていたのだが、今の如月はスタメン入りをしたいという意思があった。

栗山「……君も変わったね」

「…別になにも」

栗山「コレも翔平のおかげかな？」

「は？！な…んで大谷さんの名前が出るんですか」

栗山「君のことを一番気にかけてるからね。翔平なりに、君に寄り添ってくれてるんだよ」

肩をポンポンと叩かれる。優しく叩かれたはずなのに、どこか重みが感じられた。

山本「……如月さん」

「…ん？」

栗山監督との話を終えた如月のもとに、ふらりと山本が足を運ぶ。唇周りをペロリと舐め、忙しなく辺りを見回す挙動不審な山本。怪訝そうな顔でそれを見れば、意を決したように山本は口を開いた。

山本「…如月さんて、試合前何考えてますか？」

「…別になにも」

山本「緊張するなぁとか、勝てるかなぁとか……色々考えたりしないんですか？」

「しない。考えたところでどうにもならないでしょ。そんな事考える暇があるなら、今の自分に何が足りないか考える」

山本「じゃあ如月さんの目から見て、今の俺に何が足りないと思いますか？」

真っ直ぐな目。如月は言葉を吟味しながら考えて、山本の横を通り過ぎた。

山本「え、ちょ、如月さん！」

利き手じゃない腕を掴むが振り解かれる。肩を落として如月の後ろ姿を見つめていれば、こんな声が聞こえた。

　

「十分戦える素質があるのに、自信がないところだねぇ」