19 ページ22
死球によって一塁に進んだが、後続の村上は空振り三振を取られスリーアウト。如月は脇腹を抑えながらベンチへと戻って行った。真っ先に心配そうな顔で駆けつけた湯浅を手で制し、深刻そうな顔で話し合う栗山監督と吉井コーチの元へ向かう。
「もっかい抑えてきます」
吉井「如月、無理しなくていい」
「いけます。大した事ないので」
吉井「痛むだろう。そんな不調な時に出すわけにはいかない」
「投げれます」
栗山「＿＿駄目だ」
二人の言い合いを止めたのは栗山監督だった。目を細めて栗山監督を見つめるが、表情を変えずに栗山監督は口を開く。
栗山「3回からはダルが登板する。取り敢えず君は脇腹を診てもらいなさい」
「……たったの2回で終わりだなんて、不甲斐ないです」
栗山「はは、そうかい？1日で随分と変わったね。やっぱり抑えなんかじゃ物足りないんだね」
「なっ、そうじゃなくて！………先発を任せられたからには全力で最後までプレーしたかっただけです」
栗山「君の気持ちは充分伝わっている。今は体を休めて仲間を信じてくれないかい？」
悔しそうに顔を歪め、如月は小さく頷いた。あの時死球なんて受けなければ自分はもう一度マウンドへと立てたはずなのに。考えたところで仕方がない。如月は息を吸ってそのまま医務室へと足を運んだ。
如月の代わりにダルビッシュが、そして代わりに大谷が打者として打席に立つことになり、事実上如月は交代となってしまった。
中野「…A」
「……笑いに来たのかよ」
中野「ほんっと素直じゃないな」
試合途中、医務室で治療を受けていた如月の元に中野が訪れた。捲られた服の下から覗く痛々しい痣。氷嚢を当て冷却をしている最中だった。
中野「……まだ痛む？」
「……」
中野「皆心配してる。離脱したらどうしようとか言ってる人もいたし」
無言を貫く。一向に顔を見ない如月に、中野は顎を掴んで無理やり目線を合わせた。
中野「A」
僅かに如月の瞳が揺れる。
中野「………ふはっ、間抜け顔」
「………お前もあの人に似てきたね」
中野「あの人って大谷さん？やっぱ尊敬する人の行動は真似しなきゃいけないね」
「そんなとこまで真似すんなバカ。……後で京己のところ行ってあげないとねぇ」
中野「めちゃくちゃ心配してたから。楽になったら行ってきな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 640人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キョンシー(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月19日 8時) (
レス) @page3 id: 84d2022181 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
