13 ページ15
いきなり隣に座ってきた如月に中野は大層驚いた。その反対側にいた岡本や後ろにいる牧も固まっている。突然会話が消えたことに不審そうに中野を見れば、あの丸い目で如月を見ていた。
「………人を化け物でも見たような目で見ないでくれん？」
中野「……Aから来てくれるの珍しいから」
「……お取り込み中なら他行くけど」
中野「そんな事言ってないだろ…！」
試合中にも関わらず独特の空気が流れている。会場は盛り上がっているのに如月の周りだけはまるで北極のように冷えていた。先発として登板している大谷を見つめながら、如月は口を開く。
「……大谷さんって、ぶっちゃけ投手より打者の方が向いてるよねぇ」
中野「いや両方凄いだろ」
「俺から見ればあの人は打者の方が凄いけど」
中野「……そんなAは？自分自身の事どっちの方が優れてると思ってんの？お前も二刀流じゃん」
「……俺は投手の方が良い。少なくとも大谷さんよりは優れてると自負してる。でも」
でも。そんな接続詞に中野はゴクリと唾を飲み込んだ。側で話を聞いている牧と岡本も、ひっそりと如月の言葉を待っていた。
「世間から見れば俺なんて大した事ないんだなって痛感させられた」
中野「そんな事ない。Aは充分世界で戦える、」
「分かってへんな。だからこそ燃えてくるんだよ。世間に俺の凄さを見せつけて、その顔を苦虫を噛み潰したような表情にするのがな」
中野「……そういうところが大谷さんと比較されるところだろ」
「だろーな。外見も中身もあの人に勝てると思ってないし、そもそも勝とうと思ってないし。ただ唯一勝てるのはプレーだから。同じ二刀流、俺の方が凄いって言わせるのが楽しみで仕方ないんだよねぇ」
岡本「…………如月さんは普通に凄いと思うけど」
黙って話を聞いていた岡本がおもむろに口を開いた。如月はあの三白眼でジロリと見るが、岡本はどこ吹く風といった様子で淡々と話す。
岡本「数え切れないほど試合しとるけど、どっちも凄いよ。如月さんはエグい」
牧「そ、そうっすよ！何と言われようとも如月さんには如月さんのプレースタイルがありますし、何よりそんな如月さんの事が大好きなファンが少なからずいる訳ですし」
岡本「そ。だからそんな変に僻んだり対抗しなくても良いやろ。如月さんは如月さんな訳だし」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 640人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キョンシー(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月19日 8時) (
レス) @page3 id: 84d2022181 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
