その男、問題児なり (ページ12)

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湯浅「Aさ＿＿」

如月のことを探しにロッカーにやってきた湯浅は、大谷に背後から抱きしめられる姿を見て、小さくは？と呟いた。二人の後ろ姿を呆然と見つめ、思い出したかのように隠れる。

「…………こんな俺も主役になれるんですか」

大谷「なれる、なれるよ」

ギュッと拳を握り締める。自分だけが如月の事を理解してるはずなのに。

湯浅(Aさんが他の人と打ち解けるのは嬉しい……なのにすごく嫌なのは何でだよ)

阪神に入団した時から異質な存在だとは思っていた。だが性格に難があってもプレーは尊敬している。如月にどう思われようと話しかけ続けて、ようやく心を開いてくれたと思ったのに。

湯浅(大谷さんはすぐにAさんと距離を縮めてる……)

それが悔しくて仕方がない。踵を返してロッカー室から遠ざかる。自分とあの人の何が違うんだ。そう心の中で吐き捨てるように言って立ち止まる。

湯浅(＿＿何もかも違うんだろうな、俺と大谷さんじゃ)

寂しげに目を伏せてため息をついた。

「＿＿今、誰か居ませんでしたかぁ？」

大谷「ん？気のせいじゃない？」

「そうですか。で、いつまでこの状態なんですか」

大谷「俺の気の済むまでかな」

「俺は嫌なんで離してください」

大谷「えー」

いつまで経っても解放する気のない大谷に嫌気が差し、如月は利き手じゃない方の手を思い切りつねった。あまり痛そうな感じのしない大谷だったが、これ以上如月に嫌われるわけにいかず渋々放す。さっさと身支度を始める如月に大谷は声をかけた。

大谷「A！何でもかんでも一人で抱え込むなよ」

如月は返答しない。その代わりに手をヒラヒラと振ってそれに応えた。

「！お前こんなところで何してんの＿＿京己」

湯浅「Aさん。ナイスピッチでした…」

「ん。要件は？」

全て見透かされている。湯浅は唇をギュッと噛み締めて小さい声でこう答えた。

湯浅「頭、撫でて欲しいです……」

如月は目を丸くして考え込む。湯浅はハッとして首を横に振った。

湯浅「……嘘です、気にしないでくださ＿＿」

フワリと撫でられ湯浅は顔を上げた。

「甘えたかよ、珍しいねぇ」

そんな如月の言葉に心が軽くなる感じを覚える。やはり自分はこの人の事が好きだと実感させられた。