52 ページ9
松井「A君」
新たに瓶を取りに来た如月の肩を叩いたのは松井だった。今大会は軽い会話しかしておらず、2人の接点はあまりない。じぃっと見つめる如月に松井は瓶を差し出した。
「…ありがとうございます」
松井「凄い活躍したね」
「あの人ほどではないですけどねぇ」
松井「あの人って大谷さん?」
「…まぁ」
松井「俺はA君の事を褒めてるのに」
「……ありがとうございます。でもやっぱり、」
松井「……大谷さんと比べちゃう?」
「…そうですね。比べますよ、そりゃあ」
松井「俺も分かるなぁ。2人みたいに二刀流じゃないけど、WBCで投げたの1試合だけだったし。……情けない期間だったよ」
でも。続いた松井の言葉に如月は顔をあげる。
松井「一流の選手に囲まれて、色んなものを見られたり話を聞けて本当に嬉しいんだ。欲をいえばA君ともっと話したかった」
「……俺とですかぁ?」
松井「A君はこの先、もっと活躍する選手だから。色々教わりたいしね」
「…俺の方が教わりたいくらいですけどね」
何かを考えて口を開けようとした如月の顔に、松井はシャンパンをかけた。あの三白眼で睨まれるが、最初の頃にあった怖さは最早存在しなかった。灰色の服がシャンパンの影響で濃くなっている。
松井「さ!暗い話はやめにしよ。まずは優勝を一緒に喜ぼうね!」
「……はぁい」
踵を返してその場を離れる松井の背中にシャンパンをかける。名前を呼んで振り返った松井を無視して、如月はその場を後にした。
__見た目によらず臆病な子だ。如月が見上げる先には、気まずそうな宇田川と、どこかウキウキした山崎がいた。
山崎「本物の如月さんですか?」
「残念ながら本物だね」
山崎「俺、如月さんのことめっっっちゃ好きなんですよ!」
「はぁ……」
山崎「ずっと話しかけたくて、でも恐れ多くて1人で葛藤してたんです」
「その割には結構グイグイきてるけどねぇ」
山崎「シャンパンのお陰ですよ!」
「……それより君の隣の子、どうにかしてくれない?」
さっきから沈黙を貫き固まる宇田川。如月に怯えているのか緊張しているのか分からない。先ほどまで嬉しそうにシャンパンをかけていたのが嘘のようだ。
山崎「おい、なんか反応しろよ」
痺れを切らした山崎が、濡れた手で宇田川の頬をペタっと叩く。我に返った宇田川は、口を開いてこう言った。
宇田川「俺、如月さんと話してる……」
841人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
陽 - この作品は最初の方から追わせていただいていた大好きな作品です!続編とても嬉しいです!ありがとうございます!これからも応援しています!更新頑張って下さい!! (3月26日 18時) (レス) id: ea57203bd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ