その男、問題児なり2 (ページ8)

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たくさんのシャンパンが用意されたロッカールーム。如月はフライングでシャンパンを一口飲んだ。久々に嗜むその味に、もっと飲みたい欲が湧く。

中野「Aもう飲んでるの？」

「ダルビッシュさんも飲んでたよ」

中野「まじ？早すぎるって」

「別にいいでしょ」

互いに笑い合っていれば、栗山監督の「世界一の侍」の掛け声でシャンパンファイトが始まった。途端にずぶ濡れになる如月。中野ではない別の人物による行動に、ゴーグルを外しながら顔を確認しようとする。しかしそれを遮るように更にシャンパンが降り注いだ。

「目ェいた……」

村上「Aさん〜！！！掛け合いましょー！！」

「村上……いつの間にさん付けなんだよ…」

村上「え？だめです？？如月さんって呼ぶの堅苦しいんで！俺のことも名前でいいですよ！」

「わかっ……ちょ、かけすぎ…！」

バシャバシャと容赦なく如月に掛けられる。村上の攻撃を喰らっていれば、突然如月の衿が捲られてひんやりとしたシャンパンが投入された。

「拓夢おまえ…！」

中野「隙を見せたAが悪い！」

「意味わかんないこと言うなって！」

中野「冷た！！」

中野にしてやられた如月は、中野のゴーグルの中にシャンパンを注いだ。

中野「……嬉しそうだね」

「嬉しいよ、優勝したの」

中野「良かった、ホント」

そう呟いた中野の言葉には色んな意味が込められていた。当初はどうなるかと思った如月とのWBC。次第に打ち解けて仲良くなった如月と他の選手たち、そしてWBC優勝。目頭が熱くなってきた中野は誤魔化すように、シャンパンでベタつくゴーグルをかけ直した。

佐々木「Aさん！」

宮城「如月さ〜ん！」

今度は仲のいい2人組に捕まえる。いつ見ても一緒にいる佐々木と宮城に、如月は頭からシャンパンをかけられた。嬉しそうな2人に何も言えず黙って終わるのを待つ。

佐々木「シャンパンファイトは真っ先にAさんのところに行こうって2人で話してたんです」

宮城「でもやっぱり中野さんたちとお話しされてたので、3番目くらいでしたけど」

「……お前らの気持ちだけでも十分だよ」

佐々木「俺、Aさんと一緒にWBCに出れて良かったです」

「…ホント？」

宮城「本当ですよ！！こんなところで嘘なんてつきません！」

2人の屈託のない笑顔を疑う訳にはいかない。そっか、と呟いた如月は穏やかな表情だった。