50 ページ7
最後のマウンドを締め括るのは大谷。ゆっくりとした足取りで歩いてくる。吉田の隣で大谷の姿を見守りながら、如月はWBCの思い出に浸っていた。色んな事が一瞬で過ぎ去ってしまった。このメンバーで代表として戦うのも最後だと思うとやはり寂しい。あっという間だった。
先頭打者にフォアボールを許すが続く打者をゲッツーとして2アウト。あと1つのアウトを取れば日本の優勝が決まる。そんな大谷の前に現れたのは同じエンゼルス所属のトラウトだった。まるで漫画のような展開に、流石の如月も唾を飲み込む。
いつにも増して緊張し喉が渇く。大谷の首元に見える磁気ネックレスを見て、如月は目を瞑った。まるで自分も
会場が妙に静かに感じた。投げられる球をその場にいる全員が猫のように目で追いかける。160キロの速球を連続して投げ込むなどし、フルカウント。心臓が太鼓のように波打つ。次で決まる。
投げられたスライダーは大谷の得意な球種だった。トラウトのバットは宙を切る。大谷は感情を爆発させ、帽子とグラブを投げ飛ばした。誰もが大谷の元に駆け寄る。如月も軽い動きで柵を越えたが、隣にいた吉田はパンダのように転がっていた。
「……大丈夫ですかぁ、吉田さん」
吉田「あはは…もう疲れて足が上がらなくて、咄嗟に受け身取ったから大丈夫」
「いきましょ、吉田さん」
そんな吉田に手を差し出す。吉田は目を丸くしながらも、がっしりと如月の手を掴んで立ち上がった。2人で遅れて合流すれば、すぐに選手たちの輪に巻き込まれた。
「泣いてるんですか?大谷さん」
大谷「うるさいよA」
「良かったですねぇ打たれなくて」
大谷「……うん、よかった」
プレッシャーから解放された大谷は、思い切り如月に抱きついた。普段なら素っ気ない態度をとるが今日は特別だ。大谷の背中に手を回して如月も熱い抱擁を交わした。
表彰式を終え写真を撮り終わり、栗山監督、大谷、ダルビッシュ、ヌートバーの4人が胴上げされた。山川や牧らが如月も胴上げしようと口に出していたが、如月は存在を消していた。
841人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
陽 - この作品は最初の方から追わせていただいていた大好きな作品です!続編とても嬉しいです!ありがとうございます!これからも応援しています!更新頑張って下さい!! (3月26日 18時) (レス) id: ea57203bd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ