その男、問題児なり2 (ページ6)

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日本も点数を稼ぐことはできず8回に突入する。日本は6人目のダルビッシュがマウンドに上がった。7回の打席を終えた大谷はブルペンに向かう前に、如月の元へ足を運んだ。

いつものあどけない笑みではなく真顔で前に立ち尽くす大谷に、如月の両隣に座る湯浅と大勢は唾を飲み込む。如月はじっと大谷を見つめるが、大谷は何も言葉を発しない。

「……はぁ。分かりました、大谷さん来てください」

暫くして如月はため息と共にそんな言葉を残した。立ち上がって大谷と共に人気のない隅へ移動する。取り残された湯浅と大勢は、顔を見合わせて首を傾げた。

大勢「なんの話だろ」

湯浅「…さぁ」

大勢「てか俺のこと睨みすぎ」

湯浅「気のせい」

「あの大谷さんでも緊張する事あるんですねぇ」

大谷「そりゃあるよ…」

「いつも通りで良いんですよ。早くブルペン行って練習したらどうですか」

大谷「……」

「…まだ満足いかないんですかぁ。ホント面倒くさい人ですねぇ」

無言を貫く大谷に対し如月はため息を吐く。スーパースターと言えど、この大舞台のフィナーレを飾るのはどうやら緊張するようだ。

如月は少し考えて、自らの首に手を回した。如月の首にかかる磁気ネックレス。それを外すと如月は背伸びをして大谷の首に回そうとする。だが身長差もあり僅かに届かなかった。嫌そうな顔をしつつ、如月は更に大谷に近付く。ようやく届き、自身の磁気ネックレスを大谷に渡す事に成功した。

大谷「え…Aこれ、」

「あげます。それを俺だと思ってマウンドに連れてってください。アンタで最後を締め括るところ、見してください」

大谷「！」

「……大谷さんとこうやって話せるのも後わずかですから」

大谷「そんな寂しい事言わないでよ」

「事実です。優勝したら俺は日本に帰ります」

大谷「……俺はヤダ」

「俺は嬉しいですよ」

大谷「なんで」

「＿＿こうやって大谷さんと共に戦えた事が最高だから」

大谷をブルペンに送り出して戻ってきた頃。試合はシュワーバーにホームランを打たれ、1点を追加したところだった。被弾はされたがこの会を抑えたダルビッシュ。

3対2と、日本のリードは1点差である。2アウトの場面でフォアボールを選んだ山田が盗塁を決めるが、後続は続かず9回に突入した。