その男、問題児なり2 (ページ26)

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松本も打ち取り迎えた対柳田。お互いどこか楽しそう＿＿というよりは不敵の方が似合うだろう、なんとも言えない笑みを浮かべていた。

(正直に言えばギータさんは何してくるか分からん。勝負が早いバッターやし、カウントを取りに行くなら初球から勝負せんと)

簡単にアウトを取れる打者ではない。如月自身もよく理解している。そしてそれは柳田も同じだった。簡単に打てる投手ではないと言うことを。

(初球で高めに真っ直ぐ狙ってフォークで落として2ストライク。勝負球は低めの変化球で、膝元に食い込んでいけばなお良し、って感じやな)

まぁ全部が全部、そう上手くいくとは限らんけど。

心の中で小さく吐き捨て目を細める。今はオールスターだ。難しく考えなくていいだろう。少なくともWBCの時のように真剣に考える必要はない。

(気楽に行くか)

松本「粘るなぁ……」

万波「どっちも凄い……」

源田「A君もやっぱり簡単に打たせてくれないねぇ」

杉本「アカン、なんかこっちまで胃痛が」

頓宮「無理、俺打ちたくない。でも打ってみたい」

栗原「頼むから三振してくれ。いやでもホームラン打ってくれ！」

紅林「二人ともどっち応援してるんですか」

中野(A、ワザと引き伸ばしてるのか？2球目、絶対ボールになるように投げたでしょ)

木浪(Aならアウト取れるから大丈夫だね)

牧「あーまじおっかないっす。味方で良かった」

戸郷「……巨人来ないかなぁ」

佐藤(やっぱ打者のAさんもカッコいいけど、投手の方が俺は好きやな……)

小笠原「めちゃくちゃ失礼だけどここでホームラン打たれんかなぁ…。Aさんが打たれたら仕方ないでしょ」

九里「今の言葉伝えとくわ」

小笠原「嘘ですやめてください。Aさん抑えてください！！」

スリーボールツーストライク。如月が予想していた以上に柳田は食らいついていた。これで何回目のファウルだろう。流石に如月にも疲れが見えてきた。額に汗が滲み、ゆっくりと頬をつたっていく。

大抵柳田に打たれる時はいつもこうだった。如月が疲労を見せ、甘いボールを投げてしまう。柳田からしたら今が絶好のチャンスなのだ。

(どうせ打たれるなら得意のボールでいくか。打たれたら打たれたで改善の価値があるって判明するし)

梅野に視線を戻す。梅野が下した決断は、まさに如月が欲していた球種だった。