その男、問題児なり2 (ページ23)

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中田「で、いつまでここにおるん」

「試合が始まるまで」

中田「せっかく選ばれたんやからもっと交流すればええやろ」

「お望みの人が居ないオールスターなんていても意味ないです………っていうのは建前で、本当は動くの面倒なだけです」

中田「怠惰やなぁ」

実際、足に根っこが絡まったかのように動く気力がない。みんな色んな人と会話をしているがそんな気分ではなかった。如月から関わることはないだろう。向こうから来ない限り、話すつもりはない。

「……なんで選ばれちゃったかなぁ」

中田「まぁ俺Aに入れたし」

「ギータさんに続いて翔さんもですか…」

中田「Aの好きな人も入れてたで？一緒にやりたいって言っとった」

「はぁぁ…そんな事言われたらますます勇人さんと野球やりたくなるじゃないですかぁ」

重たい腰を上げる。この場に坂本がいれば如月はずっとそこに居ただろう。近本の顔も思い浮かぶが、オールスターに選出された選手の中で1番懐いているのは紛れもなく坂本だ。

「とりあえず、適当に挨拶回りだけしてきます」

中田「おう、行ってこい。＿＿だいぶ表情が柔らかくなったな、A」

「……気のせいです」

夏バテかと勘違いするくらいに如月の表情は死んでいる。如月は過去最速レベルで挨拶を済ませるとベンチへと戻って行った。途中佐々木に捕まったり、オスナやバウアーたちと球種の事を話していればあっという間に時間はやってきた。ホームランダービーを終え試合に入る少し前。

「村上、お前先発だよね」

村上頌「あ、Aさん。そーです、自分先発です」

「ふーん…」

村上頌「なんですかその含みのある言い方」

「お前、あんま油断すんなよ」

村上頌「まさか！しませんよ」

如月の目付きは変わらない。二度頷くと顎でしゃくってその先へ行くように促した。

村上頌(完全にやらかした)

先発を任された村上は1人冷や汗をかいていた。初回から打たれ近藤の連打で一、二塁とし次に続く松本が右翼へ先制タイムリー。さらに柳田、栗原の中前適時打が飛び出し、頓宮の遊ゴロの間に1点。いきなり4点を失う形となった。

村上(これ絶対Aさん怒ってるよなぁ…)

試合よりも如月の機嫌が気になって仕方がない。8番の源田を空振り三振に抑え、ようやくパリーグの攻撃が終了した。仲間が暖かく迎えにきてくれるが、やはりそこに如月の姿は無かった。