その男、問題児なり2 (ページ1)

今日:1,101 hit、昨日:1,334 hit、合計:57,670 hit

44 ページ1

日本が勝てば３大会ぶり３度目、アメリカなら２大会連続２度目の優勝となる一戦で、日本は左腕の今永の先発が決まった。いよいよWBC優勝まで目前に迫った今、やはり空気はピリピリとしている。

試合前のロッカー。円陣の声出しを大谷が指名された。たくさんの視線を受けながら大谷は口を開き、言葉を口に出した。

大谷「僕から一個だけ。憧れるのをやめましょう」

大谷「ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターを見ればマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたり、野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。憧れてしまっては超えられないので、僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」

大谷の後ろにいる周東の笑みが消える。
メジャーリーガーを前に憧れるのをやめろだなんて無理な話だろう。もしくは大谷に憧れているのどちらかだが。

如月も中野の隣で俯きながらそれを聞いていた。大谷だからこそ言葉の重みがある。

大谷「さぁ行こう！」

大谷のその言葉に、ロッカー内は昨日の試合終わりのように熱気がこもった。

互いの国旗を掲げながら登場するというド派手な仕様。スタジアム内は最高値の興奮が広がっている。両国の選手たちが到着したその先には優勝トロフィーが飾られていた。

(………いよいよか)

互いのスタメンが発表され、アメリカの国歌が流れる。それが終わると日本の国歌が流れ、ここに最高の試合が開幕した。

トラウト「"キサラギという男は翔平と同じ二刀流だ。今までの活躍は見てきただろうけど、かなりの要注意人物だ"」

ベッツ「"そうだな。一人だけ肝が据わっている。正直俺たちと同じメジャーリーガーみたいだ"」

ターナー「"でも勝つのは俺たちアメリカだろう？"」

ゴールドシュミット「"当たり前さ"」

「どこからもホームランが飛び出す打線ですね」

大谷「だね。絶好調のターナーも9番から6番に上げてるし、繋がり重視だと思う」

「……大谷さんのあの言葉」

大谷「ん？」

「憧れるのをやめましょうって話」

大谷「うん」

「………俺はずっと、大谷さんに憧れてた」

大谷「……！」

「じゃないと二刀流なんてやってません」

大谷「A、」

「それだけです。また後で」