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*
「…あれ。」
もぞもぞと動き出した涼介は、丸めた身体を伸ばしつつ目を擦った。
あれだけ泣いたものだから、赤くなってしまっていた。
「涼介、気分はどう?」
「…きぶん、?」
「あ、えっと。具合悪いとか、苦しいとか。」
少し首を傾げ、のろのろと細腕を動かし自分の身体をぺたぺたと触る。
「とくにないけど?」
少し怪訝そうに俺を見上げる涼介と、何とか貼り付けた笑みを向ける俺。
「そか、お腹空いた?何か作るよ。」
「えー。ほんと?てか大貴料理なんかできるの?」
「できるわい。いま独り暮らしだわ。」
食欲はある様だし、一先ず食べやすいものでも作って食わせよう。これからの事はその後だ。
ごちゃついたキッチンから何度か様子を伺うが、泣く様子も無ければ、パニックを起こす様子も無い。
呑気に鼻歌なんて歌っている始末。
苦しそうな様子がないのは幸いだかその反面、
俺は機嫌良く鼻歌を歌うその涼介の姿に違和感を感じていた。
*
家にあるものでぱぱっと作ったのはオムライス。
なんせ、調味料と米、賞味期限ぎりぎりの卵くらいしか家に無いものだから。
見た目不細工でも味に影響は無いはず。
「出来たよー…あれ、涼介?」
ソファにいると思っていた涼介の姿はそこになく、ひざに掛けてやっていたタオルがぐちゃりとそこにつくねてあった。
ベランダ側の窓の方に目をやるとフラフラとベランダに出る涼介。
「え、ちょっ…!」
涼介がベランダの手すりに手をかけたところで何とか肩を掴んだ。
俺に料理させて、そっちに気を取られている間に、まさか。
ぐるぐるとかける言葉を探して頭を悩ませたが、最適解が見つからない。
「大貴、何なの。」
「あ、いや、ちょっとまって。ほんと。お願い。」
「なんで。」
「早まるな」はなんか違うし、「田舎のお袋さんが…」って、刑事ドラマかよ。「裕翔が悲しむ」裕翔なんて言ったら余計だめだ。
「ねぇ、ねぇ!聞いてる?…雨降ってるんだけど!」
「え?」
「だから雨!ベランダに吹き込んでるし、マット濡れるって言ってんじゃん!」
外を見るとベランダに吹き込んでくる雨粒に気がついた。
面倒で、数日取り込むのを放棄していた玄関用マットが大粒の雨に晒されていた。
「うわっ!ホントだ!」
「だから言ったじゃん。」
ガチの水玉模様を作ったマットを部屋に投げ入れると、涼介はケラケラ笑ってこちらを見ていた。
人の気も知らないで…
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匿名 - 受験生がんばれ! (2019年6月15日 15時) (レス) id: 4ed895b44d (このIDを非表示/違反報告)
李弥(プロフ) - JUMPLOVEさん» ありがとうございます…!!頑張りますm(*_ _)m (2019年3月14日 11時) (レス) id: 8afa434797 (このIDを非表示/違反報告)
JUMPLOVE - ゆとやまの日常萌えます、、!!!応援してますので、更新頑張ってください!!! (2019年3月14日 4時) (レス) id: f4e667ae46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:李弥 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2019年3月12日 22時