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6話 ページ7

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「...少し、思い出したわ。」


とりあえず鬼殺隊について説明しようにも、床に座り込んだままなのは如何なものかと、キュラソーを応接間に通して茶を飲んでいたところ。警戒して出されたお茶には口を付けなかったが、ふっと息を吐いた彼女がそう言った。


『?』

「あなた、クレーン車が観覧車に潰され始めた時、中に押し入ってきて私を引っ張り出したでしょう。」

「「!?」」

「なっ毎回毎回無茶するなあとは思ってたけどアンタ何してんだよ!!!」

「無茶な状況で助けられた俺が言えることではねえが、もっと慎重に行動しろ!!」


キュラソーの言葉にギョッとした2人がガクガクとAの肩を揺さぶるが、彼女は「だってあのままじゃキュラソー死んじゃってたし...」とほざく。お前も死んじゃってたかもしれねんだよ。

ギャーギャーと騒がしい彼らを横に、キュラソーは自分が死にかけたあの時のことを思い出す。













_____ああ、これで終わりだ。


クレーン車を思い切り観覧車にぶつけ、ミシミシとそこら中から歪な音が鳴り始めた時。
キュラソーは死に対する恐怖などこれっぽっちも無く、むしろ清々しい気まであった。あの子供達を守って死ぬことが出来るのならば、それは自分にとって一番の名誉であると。血なまぐさい暗闇しか知らなかった自分に、なんの躊躇もなく差し出された手のひら。教えてもらった光。彼らと過ごした時間は短いものだったけれど、それでもキュラソーにとっては十分すぎるほどの宝物だった。

だから、ここで死ぬことに悔いは無かった。...それなのに。



____ガゴン!!



「っ!?」

『あ、やっぱりここに居た。』

「なっ、貴方どうやってここに...っ」





『___行くよ。死に場所はここじゃないでしょ。』





ライトアップされた夜の水族館が、厭に映えて映る。チラリと見え隠れする群青色の双眼に、場違いにも見蕩れてしまったことを覚えている。
抵抗する暇もないまま、凡そ人間が出せるものではないスピードで走り出す彼女に抱えられ、キュラソーは助け出されたのだ。
遠のいていく意識の中で、彼女の言葉だけが頭の中に響き渡っていた。








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はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (3月23日 14時) (レス) @page41 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おいしいくじら | 作成日時:2024年3月1日 16時

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