春夏秋冬 (ページ5)

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篝火花赤ページ5

……side
もっと見ておけば良かった。
もっと抱き締めとけば良かった。
もっと手を繋げば良かった。
もっと愛しておけば良かった。
何で？
何で？
君を……

今日は,珍しく綺麗な青空だ。
2日前に梅雨入りして雨が続いた。
まぁ、6月と言えば普通のことなんだろうけど
仕事が終わって、ふとスマホが鳴った……
「もう着く？僕」「もう着くよ。俺」
この俺と僕と付けるのは2人だけのルールだ。
曲がり角を曲がって、横断歩道を渡る。
少し古びた家
大きな正面玄関では無く、小さく大人1人分
の幅しかない玄関から入っていく。
すると，「おかえり雨降ってなかった？」
優しい君の声
「ただいま降ってなかったよ。」
多分今日は洗濯物をしなかったのだろう。
「夜ご飯は？」と俺
「え、作ってないよ？」と君
テーブルの真ん中に置いてあるアイビーの花
が揺らいだ……まるで水滴が落ちたように。

いつの間にか，時間が過ぎていた。
ふと見ると右手の甲には血が……

愛していたのに。

俺は君を殺した。

あんなに愛していたのに。

でもどこかキツかったかもしれない。
俺は，冷静に考えて
彼を抱き,シャワールームへ
何度も何度も冷たい水をかけるけど
暖かい血は流れ続ける。
彼を湯船の中に入れて、電話をかけようと
出ると窓の外は、何時の間にか暗く雨が
降り続けている。
俺は，電話をかけるのを辞めた。
自分の部屋にあった物と
脱衣場にあった物と君が握っていた紙を持って
君のもとへ戻る，
湯船の中は真っ赤に
染まっている
俺も服を脱いで、入る。
君を後ろから抱き締める。君が握っていた紙
手紙を読む。2人の思い出と君からの感謝の言葉
そして……今日は2人の記念日ということ。
申し訳なくて，罪悪感が堪らなくて，
慌てて，君が俺の匂いと言って買ってきた香水
を湯船の中に入れた。君の好きな花と共に
ｶﾁｬﾝという音と共にまた一段と湯船は
赤く染まった。湯船に浮かぶ｢シクラメン｣も。