【呪術廻戦】狗巻と黛はすこぶる仲が悪い

参拾壱《10》 ページ32

「五条先生に、素直になれって言われました」

『へぇ』

「俺は、素直じゃないですか」




さっきまで、まるで後悔を噛み殺したような

重たい顔をしていたのに


またいつものスカしたような真顔に戻って

何を考えているか分からなくなった



けれどこの棘の中だと

そんな顔で何を思っているのか分かるんだ



いつも、そんな風に考えていたんだね




『私に見返りなんて、求めないでね』

「…求めてません。ただ俺が…あんたに認めて貰いたいだけだ」

『………』

「……先輩、俺は…ずっと、ずっと前から、見て欲しかったんだよ。"代わり"じゃなくて、俺として…」




いつも真顔の裏に隠していた内面を

この空間で素直に吐くのか


別に言わなくても

この場じゃ何でも筒抜けなのに


それでも口に出して言うのか



そこまでして、見て欲しいの

こんな狭い世界で生きてる私に




「……俺は、言いましたよ」

『…そうだね』




これで、私が恵ちゃんを遠ざける理由が

なくなってしまった



恵ちゃんが心を開かないから

私も開かないつもりだったんだ


でも今、恵ちゃんは素直に言った


筒抜けになるこの空間で

自分で言った



なにか、他に理由をつけようか


無愛想なのが嫌だとか

内側に入り込もうとするのが嫌だとか


拒絶する言葉はいくらでもあるだろ



突き放したらいいじゃないか


今までみたいに




『……お前の先輩になんて、なるんじゃなかった』

「？A先輩…」

『なんでもないよ、もう…もう戻ろうか』

「あ…はい」




ごめんね、迷惑かけて

もうこんなところ出よう


出たら先生に沢山怒られるんだろうな

虎杖くんとかも、心配してるかもな



ごめんね






ごめんね恵




お前の先輩なんて、ならなければよかった






先輩は、可愛い後輩のこと見捨てられないよ




突き放せばいいのに


その言葉がなんにも、出てこないんだ






先輩なんて、なるもんじゃないね


.

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