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弐拾玖《8》 ページ30

誰かが入ってきた



その感覚にハッと意識が現実に

戻されたような気がした



今まで、まるで夢を見ていたかのように

ボーッとしているうちにいつの間にか


弱い心を隠そうと勝手に発動した

術式の中に、私はいた



それに気づいたばかりの私はそのことより

入ってきた誰かの方に意識を向ける



如何せん、術式の中に人を入れるのは

気分も感覚としてもいいものではない


無機物や本来の使い方なら別だが

とにかく気持ちが悪い



だからそれを許せる相手は

必然的に限定される


私の場合のそれは憂太だ



でも今ここに入ってきたのは

憂太じゃない


恐る恐る手探りで入ってくるようなこと

憂太はしないから




誰?


無断で入ってくるなんて失礼にも程がある



私がこんな歪んだ空間を作ってしまったのが

悪いんだろうけど


それでも勝手に入られると困る


怒ってしまう



私を怒らせないようにしてる五条先生や

色々察してる恵ちゃんではないと思う


それにさっきどっか行った棘も

わざわざ戻ってくることはないだろうから


きっとそれ以外の誰か




"棘"の中で私を探し当てられる前に

術式を解いてしまってもいいんだけど


この"棘"も私の空間である以上

術式を解けば消えてしまう


そうしたら空間の中にいるものは

収納されたままいなくなるから


私が再び"棘"の空間を開くまで置き去りに

なってしまう



これは戦闘で何度も使うものじゃないし

一度にかなり呪力を使うから


ここで術式を解いたとして

すぐまた開くのは多分残りの呪力的に無理




本当に勝手してくれたね



無理やり空間に入られるのは

言葉じゃ表せない気持ち悪さなんだよ


それが呪霊じゃなくて人間なら尚更


内蔵を押し上げられて

かき混ぜられてるような気分



なんで私、この誰かのために我慢してんの?



もう術式解いてやろうか


"棘"は元々拷問用なんだ

いっそここに放置してやりたい



でもここには、色んな私が捨てられてる


悲しさに正直に泣く私も

寂しさを正直に口に出す私も


昔の失敗ばかりを沢山捨ててる


それと一緒に置いていくのは

ちょっと恥ずかしいからね




『……来たね』

「A…先輩」




近づいてきた足音にゆっくり

俯いていた顔を上げる



びっくり


入ってきたの君なんだ

予想外だな




『やっぱり…私のことなんにも分かってないね、恵ちゃん』

「…まぁ、そうかもしれないですね」




どうして誰も分かってくれないの?

.

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わらびもち - 主さんの文章力で夢主の心の闇がきっちりと表現されてる…。場面も分かりやすい…。すごい…。これからも頑張ってください! (2021年1月16日 12時) (レス) id: a494b1d180 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月27日 21時) (レス) id: 495bc5f437 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白いです頑張ってください! (2020年10月25日 11時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
絵描きさん(プロフ) - *瑠璃*さん» 良かったです!今後外れていなかった際はご報告頂けると嬉しいです…! (2020年10月25日 1時) (レス) id: 215c832e11 (このIDを非表示/違反報告)
*瑠璃* - 絵描きさんさん» 大丈夫です!ちゃんと外れていますよ! (2020年10月24日 11時) (レス) id: f48c22676e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絵描きさん | 作成日時:2020年10月19日 23時

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