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弐拾陸《5》 ページ27

狗巻side




「棘、Aちゃんには優しくしなさい」



昔、まだAのこともよく知らない内に

そう母に言われた



誰のことなのか、どんな人なのか

なんでなのかも分からずに


ただ気を使うように言われた





「みんな離れていくんだ…」



Aと出会って3年が経った


母に言われた通りに

俺はずっと優しくしていた


相談は聞いたし

八つ当たりされても我慢した



だってAは、可哀想だったから

俺よりずっと可哀想だったから



俺よりもずっと弱い呪言なのに

周りから拒絶されていた


俺の家はみんな呪言に理解がある

そういう家系だから当たり前だ


でもAの家はそうじゃない



唯一Aの味方であるはずの

狗巻の出の母も、強く言える人じゃなかった



Aを怒らせないように

ストレスを溜めないように


あの頃はそのことばかり考えていた





「Aは次期当主だ。使える手段は全て使わせる。呪言もだ」

「………」



Aの父は決して甘い人ではなかった


ただAを嫌いなわけでもなくて

少し親バカな人だ



Aが簡単に死んでしまわないように

幼い頃から厳しくしていたこと


使える手を増やすことで

鍛えようとしていること


俺は分かってた



でも、呪言を使わせるのか

呪言でないといけない理由はないのに


Aには昨期雲外がある

それだけで十分なんじゃないのか



Aの呪言はまだリスクがでかい

暴走のリスクだ


きっと上手くいかない



でも、忘れてたんだその時は



Aが昔から

やれば出来てしまう子だって





「Aちゃんには優しくしなさい」




いつもそう言う母が


その日から変わった





「Aちゃんを怒らせなさい」


「それがあの子を守る方法よ」





呪言を使わせなければいい


そう反抗していた俺もいつしか

言葉を失っていった





「…Aには分からないよ、絶対」


「安全地帯にいるくせに、なにが不満なの」


「Aは楽でいいね」




思ってないそんなこと

でも口はすらすら言葉を吐いていた



Aの呪言をやめさせたい

でも、やめさせられない


弱いと死ぬ


Aの呪言はまだまだ弱いから

Aはきっと死ぬ



怒らせないと

言葉に呪力を籠めないと


Aが死なないように




それでも

出来るならば



呪言の呪縛から解放されればいい




「"呪言は使わないで"」

『うん、いいよ。……え』

「…ごめん」






ごめん…

.

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わらびもち - 主さんの文章力で夢主の心の闇がきっちりと表現されてる…。場面も分かりやすい…。すごい…。これからも頑張ってください! (2021年1月16日 12時) (レス) id: a494b1d180 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月27日 21時) (レス) id: 495bc5f437 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白いです頑張ってください! (2020年10月25日 11時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
絵描きさん(プロフ) - *瑠璃*さん» 良かったです!今後外れていなかった際はご報告頂けると嬉しいです…! (2020年10月25日 1時) (レス) id: 215c832e11 (このIDを非表示/違反報告)
*瑠璃* - 絵描きさんさん» 大丈夫です!ちゃんと外れていますよ! (2020年10月24日 11時) (レス) id: f48c22676e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絵描きさん | 作成日時:2020年10月19日 23時

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