お姉ちゃん始めました【rbr】 (ページ9)

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それなのに

『お、お父様…なんて…？』

「軍への入隊が決まった。2年間の座学、基礎訓練が済んだら、正式に隊へ入る。一週間後に迎えが来るそうだから、準備しておきなさい」

『そんな…』

「何か不満があるのか？お国の為に働くというのに」

『……いいえ、ありません』

この国は最低だ

スラムの現状を把握していながら

放置する

農民は軍への強制入隊に怯え

国王はそれを嘲笑う

街の商人は

王宮の要求に応えても

一銭のお礼すら払われない

私達貴族は

本来ならばそちら側の立場だ

その貴族である私を入隊ですって？

この国の制度として

女は非力なものとして扱われる

貴族であっても

価値のない者は死んでも構わないと

そういうことなのね

「お嬢様…」

『マリー、今まで私の面倒を見てくれてありがとう。貴方には感謝しかないわ』

「いいえ…いいえお嬢様、わたくしを見てくださったのはお嬢様だけでした。お慕いしております。今も、これからも…」

『…いいの。軍へ入れば、私の命など枯れ葉のようにすぐに散るでしょう。私を慕い続ける必要なんてないのよ』

「しかし…！」

『えぇ、分かっているわ。私のことを一番に分かっているのが貴方のように、貴方のことを一番に分かっているのも私なのよ。ありがとう』

まさか、こんなことになるとは

思ってもいなかったわ

そう…

もう時間がないのね

『マリー、貴方に頼みたいことがあります』

「っ、はい。なんなりと」

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あの子には知られたくないわ

やっと人に慣れて

人を好きになってきたのに

こんなこと…

あまりにも残酷だもの

『ロボロ』

「お姉ちゃん」

すっかり言葉に慣れて

前よりも落ち着きが出てきた

それでもやっぱり子供

時にははしゃぐし、泣いたりもする

そして、大きな声で笑ったり

柔らかい笑顔だってする

幸せな子供みたいに

楽しそうに

『ロボロ、マリーが写真を撮ってくれるんだって。こっちにおいで』

「写真？俺初めてだ」

『これから沢山機会があるわよ』

「お姉ちゃんと一緒？」

『…えぇ、一緒よ』

嬉しそうに私に抱きついて

緩んだ顔で甘えてくれるのも

あと何回見れるのだろう

きっともう、そんなにないわね

『マリー、沢山…沢山撮ってちょうだい』

「…はい、お嬢様」

「お姉ちゃん、これどこ見るの？」

『あれよ、あの機械』

私がいなくなっても

私のこと忘れないでね
.