お姉ちゃん始めました【rbr】 (ページ48)

今日:162 hit、昨日:27 hit、合計:1,024,039 hit

46 ページ48

「この国の民達…上級貴族からスラムの赤子一人、全てがこの国の民だ」

舞台へ上がったグルッペンくんは

マイクを除けて、声を張って話し出した

確実に国民の懐へ入り込むように

不信感という壁を壊していく

それが

信頼もなにも持っていない彼が

国民に語りかけるただ一つの方法

「しかし今の現状、この国は平和とはかけ離れている。戦争は絶えず起こり、それによる貧困でまともな勉学すら学べぬ子供がいる」

そう、あの子のように…

まだこの国には、あの子のように

哀しい日々を過ごしている子がいる

私には全てを助けてあげられる力はない

「昔、一人の国民の声を聞いた。彼女は酷く弱っていた…身体的じゃなく、心が。その頃の私にはこの国の現状が見えていなかった。見ようとしていなかった。国の自由は、国民の自由の元に成り立つと言うのに」

愛する家族に…弟に嘘をついて家を出た

辛い日々を過ごした

私の他にも、きっと沢山いる

「ここで宣言しよう。私がこの年で王座を継承する理由、それは…国民の解放及び、フューラーが支配するこの国の抹消が目的だからだ」

「なっ…！？おいグルッペン、どういうつもりだ！！」

「戦争の指揮がしたいという話ではなかったの！？」

グルッペンくんの隣に座っていた

前国王の父君と母君が彼に掴みかかる

グルッペンは全く動じることなく

今もまだ国民へ視線を向けている

「そして、国の再築…私が新たに国を作る。フューラーとしてではなく、国民皆で作り上げる国だ。我々で作り上げる国には差別も入隊の強要もない。スラムの民には平等に支援をしよう。暖かい食事と、最低限の生活も保証する」

横目に階下の国民を見下ろしてみる

まだ何を言っているのか理解出来ずに

呆然と見上げている者

そんなのできるはずがないと

諦めたように溜息をつく者

彼の言葉に、国の未来を思い浮かべて

思わず涙を流す者

私は、何も出来なかった

彼の背中が大きく見える

眩しいくらいに輝いている

今この男は

間違いなく国の王だ

「君たちはもう自由だ。隣の国へ移住するもよし、誰の場所でもない土地で家族と暮らすもよし。好きにしてくれて構わない。だがもし、この国の行先を見たいと思うなら…その時はこのグルッペン・フューラーに着いてくるといい」

彼は

グルッペンくんは

本当にこの国を変えてくれるのだ

私と約束をしたあの時から

この未来を考えていたのね

.