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必死に頼み込む俺を
おじさんは伏せ目がちに見ていた
その目は何だか悲しげで
あの日の彼のようだった
おじさんはしばらくして
大きな溜息をついて俺を中へ入れてくれた
中にはおじさんの他に
若い女の人がいた
多分、恋人とかだと思う
あの子の母親には見えないから
「おめぇはあいつとどういう仲だ」
『あいつ…あの綺麗な子のこと?あの子とは2年前に初めて会ったんだ。あの子は泣いていて…怪我をしていたんだ。多分彼の入っていた野球チームの監督にされたんだと思う…僕は彼が何をされていたか知らなくて、1年前の騒ぎのときから彼に会ってない』
「…あいつが初めの時以来、服を整えて帰ってくるようになったのはおめぇさんのとこに寄ってたからだな?お前が世話を焼いたんだ、そうだろ?」
『そう…僕がいつも服を直してた……ねぇ、やっぱりおじさんはあの子のお父さんでしょ?あの子はどこにいるの?』
ここに父親が住んでいるのに
あの子だけいないなんて…
母親と一緒なのか
家出をしてしまったのか
まだ9つの男の子が一人なんて
信じたくはないけれど
「あいつは半年前にはもうここを出たさ、ここにはもうあいつの居場所がなかったからな…あいつは自分より2回りもでかい男を撃ち殺したんだ。そりゃあ外に出るだけで白い目で見られていたさ、レ イプされた人殺しってな」
『人殺し…?監督は亡くなってたのか……え、ちょっと待って、レ イプって…?』
「ジム…!まだ子供よこの子」
若い女の人がおじさんを止める
だがそれがなんだ
彼のことだ
知れるなら全て知りたい
俺はおじさんを見つめた
睨むように強く
「…お前いくつだ」
『10』
「そうか…あいつより一つ上だ」
「ジム…」
「どうせいつか知ることなんだ、後にも先にも変わらねぇよ。お前が知りてぇっつーんなら教えてやる、後悔すんなよ」
そして俺は全てを聞いた
涙を流し聞いていた
彼の痛みが今更伝わったって遅いのに
なんてことだろう
俺はどうして助けなかったのか
どうしてこうなってしまったのか
ここで初めて気づいた
俺はなんて過ちをしてしまったんだと
彼のことを知ったことへの後悔はない
ただ自分自身に苛立ち、過去を恨んだ
出来ることなら戻りたい
まだ救えたあの頃の君に会いたい
そんな願いだけが頭を過ぎてって
止まることのない涙の味が
やけに口に残った
.
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絵描きさん(プロフ) - 神夜さん» 現在はもち通り、更新停止にさせていただいています。ですが漫画等はしっかり揃えてありますし、今後の他作品の進展によって更新がないとも言い切れません…。一応今のところは更新の予定はありません。 (2019年8月19日 5時) (レス) id: e46d68e377 (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - もし、更新される予定があるのならしおりを挟みたいので宜しければ返信お願い致します (2019年8月18日 14時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 作者様のBANANAFISHの作品がどれも凄く続きが気になるところで更新停止になっているのですがもう更新はされないのでしょうか? (2019年8月18日 14時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
絵描きさん(プロフ) - ヒアさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年1月20日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ヒア(プロフ) - とても面白いです!更新頑張って下さい! (2019年1月18日 23時) (レス) id: 8a5b1cf1f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年12月16日 15時