【BANANAFISH】秘密基地へおいで【男主】

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初めて彼が秘密基地へ

訪れてから


俺達は頻繁に会うようになった


連絡があるわけじゃない

彼が勝手にやってくるのだ


勝手に来るなと怒ることはなかった

いつも怪我をしてやってくるからだ


俺は最初、虐待なんだと思っていた

彼と親は仲が悪いんだと


そう思っていた


だが、彼はいつも怪我と合わせて

服をボロボロにしてやってくる


そんなになるものなのか

親のいない俺には到底分かりもしなかった


『…ねぇ、君は何をされているの？』

「え？」

『いつも怪我だらけ…心配だよ』

「…なんでもないよ。こういうことがあった日に、今みたく一緒にいてくれたらそれでいいんだ。それだけでいい…」

『……うん』


何をされているのか

彼は一度も教えてなんてくれなかった


だから俺も知らなくていいんだと

深く問い詰めることはなかった


子供だったから

何も分からなかった


大人からしたら

一目見れば分かるようなことだったのに


彼自身、何か分からなかったんだろう


言葉で説明するのも難しい

訳の分からない行為


ただ怯えてやってくるこの子を

秘密基地へ隠して


もう大丈夫だよと慰めることしか

出来なかった


逆に言うと、たったそれだけで

彼を守っている気になっていた


愚かで目も当てられない

当時の俺の最大の過ちだ


ーーーーーーーーーーーーーーー


そんな日々が続いて

俺は9つになった


彼について知っていることも増えた


彼は俺の1つ下で

もう少し丘を上がったうちに住んでいる


かぼちゃが大嫌い

最近アボカドにハマっている


少し前に名を馳せた


なんとかって名前の人を主だった

野球チームに入っている



随分と話をしてきた


好きなこと嫌いなこと


ガールフレンドはいるのかとか

兄弟がいるとか


そんな話をしている間だけは


服を汚して泣きながらやってくる

彼を忘れられた


ただの友達になれた



しかし、ある日のことだ


やはり彼は普通の子じゃない

そう実感した


「…やっぱり、今のままじゃだめだよね。こんなの嫌だもん」

『嫌って…君にひどいことをする人のこと？』

「そう」


なんて強いんだろう

この子は普通の子よりうんと強い


そう思った


『頑張れ』

その時俺はそう言って彼を見送った


頑張って立ち向かうんだよ

そんな思いを込めて





それがまさか



彼が一人の命を奪ってしまうなんて

誰も思わないだろ？

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