爆豪くんが私を忘れた【爆豪勝己】 (ページ3)

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「誰だお前…」

『は？』

その日

いつも通りおはようと話しかけると

彼は不貞腐れた顔はしなかった

代わりに眉を曲げてとても不機嫌そうに

私をジロジロ見た直後

何も知らないと言った顔で

そう言った

「じょ、冗談でしょかっちゃん…ほら、空館さんだよ。中学から一緒だったでしょ？」

「知らねぇよクソナード」

「なっ…空館さんだよ！？」

「だから知らねぇって言ってんだろが！」

爆豪くんの怒鳴り声を聞いて

緑谷くんだけでなく

次々とクラスメイトが集まってきた

爆豪くんは無意味に冗談なんて言わない

だからこそみんなが必死だった

私と爆豪くんは

ある意味注目の的だったから

爆豪くんが私を知らないはずないと

誰もが分かっていた

「おい爆豪、どうしちまったんだよ」

「なんかあったのか？」

「空館はお前のライバルだろ」

「爆豪、俺らのことは覚えてんのか？」

「なんで空館のこと忘れてんだよ」

爆豪くんは混乱していた

自分には全く覚えがないのに

私と接点があると言われて

記憶を辿っているのに

全く思い出せない

不安じみた焦燥の顔が

浮かび上がっていた

『…みんな』

その声にみんなが私を見た

爆豪くんは不気味なものを見るように

私を見つめる

『きっとなんか訳があるんだよ。落ち着いて先生から何か言われるのを待とう』

私には予想がついていた

何もなしに私のことだけ忘れるなんて

ありえない

多分、個性事故だ

なら先生にも情報が入ってきているはずだ

説明が入るだろう

私は改めて爆豪くんにおはようと言い

笑いかけた

もちろん返事なんてなかったけど

前の彼なら、小さく返事を返してくれた

んだけどな

「で、でもよ空館…」

『切島くん、爆豪くんのことよろしく…ね』

爆豪くんを尊敬しているらしい切島くんは

きっと爆豪くんの扱いを分かっているはず

ご機嫌取りよろしくの意味で

軽く肩を叩くと少し悲しそうな顔をした

別にそんな顔してほしいわけじゃない

「空館さん、あの…」

『緑谷くん…ごめんね、今日は守ってあげられないや』

「いや、それはいいんだ…それはいいんだけど…」

爆豪くんが嫌っている緑谷くんを

守るのが中学の頃から私の役目だった

爆豪くんより弱い緑谷くんを

守ってやるのが私だった

まさか私が忘れられるなんて

思わなかったな

忘れられるなんて…

思わなかった

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