煙草 ページ10
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付き合う前です。
大学時代のお話。
たなっちside
ピンポーン
今日はたまたま早く帰ってきて、
何しようかななんて考えてたら
チャイムがなる。
『…やっほ。』
「Aか…上がる?」
『…うん。』
突然来たAは、
前あった時よりも少し痩せてて、
さっきまで泣いてたのか目が赤かった。
部屋に入ってからも、
いつものように我が物顔で部屋を使うわけでも
ねえ聞いてって俺になにか話してくるわけでもなく
ソファーにちょこんと座って
ぼーっとしている。
何かあるんだとは思うけど、
急かしたくもない俺は、
Aに話しかけるわけでもなく
溜まってた洗濯物やら、
部屋にちらかったゴミたちを片していく。
すると突然Aが立ち上がる。
『…ベランダ借りるわ。』
「え?あー、うん。どうぞ。」
そう言ってベランダに行くと、
慣れた手つきでタバコに火をつける彼女。
空になったペットボトルに、
水を入れてベランダにでる。
「…やめたんじゃなかったっけ。」
『んー、まあ世の中厳しいから何か出来を紛らわさんとね。笑』
「…そか。」
『りゅう煙草苦手だったよね、ごめん。』
「いいよ、お前の煙草とか今更気にならん。」
『…ありがと。』
そう言って新たな煙草に火をつけて、
ベランダから見える空を眺めている彼女は
捕まえておかないと
離れていってしまいそうな位、
儚げて美しくて。
「俺も吸ってみようかな…。」
『りゅうはだーめ。緩やかな自殺だよ?これ。』
なんて困った顔で笑う彼女。
「…なにそれ。笑」
君がそんな事しなくても、
君の心の闇を明るく照らしてあげられるのが
俺ならいいのに。
届かない想いを胸にしまった。
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作者名:mui | 作成日時:2019年2月10日 19時