二重人格者の私ですが、それでも傍に居てくれますか【鬼滅の刃】 (ページ2)

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1話奏とソウページ2

鬼殺隊に与する一条奏は、人目に触れる事を極度に恐れていた。

元々持ち合わせていた戦闘スキルは柱の折り紙付きで、何人かの柱に継子のお誘いが来る程だった。

しかし、その絶好の機会も軽く払い除けるかのように彼女は誘いを断った。

そこまで人を避けるのは、彼女が極端な人見知りという他にも理由があった。

彼女、一条奏は〝二重人格者〟なのだ。

普段は主人格である奏が主導権を握っているが、ごく稀に副人格の【ソウ】が現れる事がある。

ソウは奏と比べ自信家で、とにかく気性が荒く好戦的なために必ず場を乱してしまうのだ。

幼き頃に奏と入れ替わったソウが暴れ回った経験があり、軽くトラウマになっていたりする。

そんな事もあり、奏にとって〝二重人格者〟である事が周知されるというのは絶対に避けねばならない重要事項となったのだった。

日々目立たぬように過ごし続けた結果、奏の事を知る人は減っていった。

平穏に安堵していた矢先、何かに導かれるかのようにそれは訪れた。

人里離れた山奥の村に、集団の鬼が現れ人を襲っている、直ちにそこへ向かうべしとの事だ。

この時奏は普段通り単独の任務だと誤解していた。

大量の鬼なのに単独って大変そうだなぁ、なんて呑気な事を考えながら彼女は山奥の村へと足を運ぶのだった。

同時刻。一足先に村へ到着していた水柱、冨岡義勇と数人の隊士達は民家の凄惨な光景を目の当たりにしていた。

彼らも奏と同じ任務を受けていたのだ。

「止まっている時間などない、一刻も早く鬼を殲滅しなければならない」

一直線に民家の奥へと走り鬼の探索に向かった冨岡。

そしてそれを遥か後ろの物陰から伺う人影。

(聞いてない……聞いてないです！他にも隊員がいるなんて……！しかも先頭を走っていたのは水柱の冨岡さんじゃないですか……!?)

頭を抱えながら、どうしようと混乱する奏。

(遅かったら怒られちゃう…あっでも私なんて大した戦力じゃないし居なくても変わんないんじゃ……)

ガキン！突如激しい金属音が鳴り響いた。

不意打ちを狙った鬼が奏の頭部目掛けて鋭い爪を振りかぶったのだ。

咄嗟に短刀で受け止め、峰で滑らし攻撃を受け流す。

そして足を引っ掛けると鬼は後ろへ倒れ込み、がら空きの頸目掛けて短刀を突き刺した。

悲鳴と罵声をあげる鬼を横目に、そのまま横にスっと刀を引いて頸を切り落とした。

(それにしても…)

血溜まりに揺らぐ自身の影を見つめながら、奏は皆と合流した時の事を想像し照れた様子で、鬼を殺したとは思えぬ場違いな様子にどこか狂気すら覚える光景だった。