魔と人間のハーフの子(3) (ページ10)

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『アサヒｯ！！』

目が覚めると

そこはもう縁側で彼女の姿はどこにも無かった

先程まで暖かかった身体も

夏だというのに今ではすっかり冷えきっている

嗚呼…九条さん……

私は貴方を失ってこんなにも弱くなってしまいました

胸の真ん中にまた大きな穴が空いてしまったようです

こんな姿貴方には見せたくなかった…

『結局私はいつだって……』

貴方は私の朝日

どんなに真っ暗な夜でも貴方が私を照らしてくれて

私を真っ先に見つけてくれる

嗚呼…アサヒ……私の朝日…

もう、私を照らしてはくれないのですね……

最後は嘘でも…嫌いと言って欲しかった……

"ありがとう"

笑顔の温かさも

人がいる幸福も

好かれる嬉しさも

貴方の愛しさも

全部失ってしまうなら

こんなにも苦しいなら

知らなければよかった……

【悪い夢でも見たか私の愛し子】

『……清乃神』

【酷い顔しよって…】

『……ねぇ清乃神』

【なんじゃ？】

『私怖いの…私は人じゃないからいつか皆を見送ることになる』

『それが…置いていかれるのが…怖い……』

あの夜…九条さんが亡くなった日に割り切ったつもりでいた

仕方がないことだって受け入れなきゃいけないって

でも…でもねやっぱり嫌なの

見送る役目はもう………

『生物って弱いのよ…心を持ったばかりに別れが辛くなる』

『実際、愛する人が亡くなって後追いする人がいる』

『愛するって苦しいの…愛しいって悲しいの』

『こんなモノ…自分が壊れてしまうだけ』

『でも…手放せない…誰かを愛する心も慈しむ喜びも』

『苦しいのに悲しいのに…捨てられない』

『誰かを愛している…誰かを愛しいと思っているから』

『ソレを大切にしたいと願っているから』

『アサヒが…三人が大好きだから』

生きとし生けるものを見てきた貴方なら分かるでしょ

感情を心を持った生物がどれだけ滑稽で

どれだけ美しいものか

記憶なんてただの産物

いつか消えて忘れ去られるもの

でもその産物がどれだけ暖かいのか

失う悲しみを私は知っている

『ねぇ清乃神』

【なんじゃ】

『私…加護を決めたわ』

【ほう…では】

【我が愛し子月尾田咲耶…汝の神として汝の願いを聞こう】

『私の願いは……』