魔と人間のハーフの子(3) (ページ43)

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十月中旬

寒空の下

私は今日も今日とて街を駆ける

さっきまでは研究室にいたのだが

緊急の呼び出しで私だけが現場に派遣されることとなったのだ

『んで？どーしたのさ急に』

尋常ではない速度で走る私の横を

さも当然のように並走する男に問いかけると

彼は歳に似つかない、あどけない笑顔を浮かべる

長尾「なーんか、面倒な魔が出たらしくてさぁ」

『面倒な魔？』

長尾「そー、しかもその任務に向かった祓魔師達と連絡取れねぇの」

『あ〜…だから私と景ね』

長尾「お、そんなこと言ってる間に着くぞ」

『…皇都の外れ……魔の森』

正式な名前は知らないが

魔が大量に出るのでそう呼ばれている森

多分、森への恐怖心が人々の負の感情を呼び起こしているのだろう

長尾「咲耶ぁ、俺から離れんなよ〜？」

『景こそ、迷子になんないでよ』

長尾「ﾊｯ…ぬかせ」

奥へ奥へと進むほど色濃くなっていく魔の気配

"中"にいるシノも不気味がっているが

私の前を進む景の背中からは不思議なほど"何も"感じなかった

チラｯと見えた景の目には先程までの温もりは無く

ただ冷たく…奥深い…先しか見ていなかった

そんな景が少し怖かった

このままどこかに行ってしまうんじゃないか

何が彼をここまで突き動かすのか

景の中のソレは何なのか

私は彼を何も知らない彼自身を知らない

知りたい

例えその先が深淵とも言える闇だとしても

私は貴方を知りたい

だって、私は貴方が……

長尾「咲耶…アレだ」

『ｯ……うん』

私と景の目線の先にいたのは

森の中の不自然に開けた場の中心で

深紅に身を染めた美しい女(魔)だった

『化け物…』