マンキー (ページ10)

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あの後も樹の態度は変わらなかった

今日髪巻いてきたんだ！か～わ～い～い～♡とか言ってくる

距離感も近いけどそれは松村くんとかにも同じだから誰にでもそうなのかもしれない

今日は日直だったのにも関わらず移動教室が多くて全然日誌が書けなかったから居残り

まぁ特に予定もないし、ゆっくり書こうかな

最初は部活の準備する子がいたり掃除当番がいたりでそれなりに騒がしかったけど15分もすれば誰もいなくなってしまった

開いた窓から入ってくる風が心地良い

イヤホンで音楽を流しながらこういうのってちょっと青春ぽいかもとか思って一人で黄昏る

『よし』

ちょっと適当に書いたけどまぁこんなもんだろう

職員室に届けようと立ち上がった瞬間後ろから誰かに抱きしめられる

所謂バックハグ状態

『わっ、なに…？！』

誰かにっていうのは語弊

近付く音が聞こえなかったとはいえ、飽きる程嗅いだことのある香水の香りがふわっとしたから

樹「俺さ…やっぱりAのこと好きだわ」

イヤホンを外すと耳元で掠れた声

『えっ』

私を振り向かせて壁に追いやった彼はそのままキスをした

硬直した私は目を見開くことしか出来ない

左手が腰の後ろに、段々とキスが深くなって右手が後頭部に回ろうとした時やっと私の脳が作動して彼を突き放した

『ちょ、ちょっと待って』

危うく彼の猛烈な色気に飲み込まれるところだった

『え、なんで？どういうこと？』

樹「この前ユキが言ってた通り、俺気付いたらAのことばっか考えてるし自覚してなかったけど好きなんだなって気付いて…」

"嫌じゃなかったら付き合って欲しい"

この春から唐突なことが多過ぎる

一旦色々整理しないと

ただ咄嗟に

あぁ、この人はなんて頭が良くて口が達者なんだろうって思った

本当に人は見た目で判断するものじゃない

『ごめん、それは出来ない

だって樹…本当は私のこと好きじゃないでしょ？』