マンキー (ページ25)

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家から出て少し歩いて沈黙を破ったのは彼だった

北「ねぇ、俺のこと嫌いなった…？」

『え？』

北「それとも元から好きじゃなかった？」

なんで、

なんでそんな悲しい顔するの？

『好きとか嫌いとか、私が松村くんのことどう思ってるかなんて関係ある？』

私はただの都合の良い女なのに

北「あるよ…

好きな人が自分のことどう思ってるか知りたいに決まってるじゃん」

『好きな人？』

すきなひと…スキナヒト…好きな人？？

北「俺さ、1年の頃からAちゃんのこと好きだよ

だからあの日突然で驚いたけど、電話してくれたのも好きって言われたのも凄い嬉しかった」

彼の言ってることに全く覚えがないけどその表情や話し方からして絶対嘘ではない

私は彼に好きって言ってしまっていたのか…

北「けど、覚えてないって言われてなんていうか…」

"なかったことにしたいのかと思って"

だから全然話しかけてくれなかったんだ

『えっと…』

言葉が出ない私に彼は続けて話す

北「遊ばれたのかなって思ったし、嫌われたと思ったけど

気付いたら樹と仲良くなってて相当堪えたし全然諦められなかったわ」

そう言って苦し紛れに息を吐くように笑った

立場は違えどお互いにほぼ同じことを考えていたなんて思いもしなかった

『あの、信じてもらえないかもしれないけど私本当にあの日のこと覚えてないの…』

覚えている限りの出来事を話したら彼は目を見開いた

『でもその…好きって言ったのは、多分つい本音？が漏れちゃったんだと思う…』

この説明を自分でするのは死ぬほど恥ずかしい

でも、ということは私達は

『だから私も松村くんのことずっと、』

恐らく2度目であるその言葉を言う前に私は彼の腕の中にいた

夜だし静かな道とはいえ人目を憚らず抱きしめられて

こんな時でもあ、意外とこういうことするんだって何処か冷静な自分がいた

北「北斗、」

『え？』

北「北斗って呼んで」

『北斗、好きだよ』

北「ん、俺も」