42.進歩 ページ42
夏輝side
「はいはい、夏輝くん以外の男の人家に上がらせたことないから大丈夫だって」
Aが適当に返した言葉
内心、めちゃくちゃ嬉しかった
Aの家に上がったことがある男が俺だけという優越感
小学生みたいな考えだけど、ちょっとだけ黎弥に自慢したくなった
「わ！お蕎麦だ！」
知らない間にお土産の袋を開けていたAは信州そばに喜んでいる
澤「あ、あとこれもー」
そう言って小包を渡すと、キョトンとした顔で眺めている
「ん？なにこれ」
澤「開けてみて」
「ブレスレットだ、可愛い！これもお土産？」
澤「そう、見て」
自分の手首をAに見せた
「え、お揃い？笑」
澤「うん、お揃い。Aに買うつもりだったんだけど、可愛くて結局俺のも買っちゃった」
「なにそれ笑なんか、カップルみたい」
澤「……」
カップルみたい。
初めてAからお父さん意外の例え話が出てきた
少しでも進歩したんじゃないか、そう思えた。
なんかキモいな俺、こんな事で嬉しくなるとか恋愛のレベルが中学生
「見て、似合う？」
さっそくブレスレットを手首に付けて、自慢げに見せてきたA
澤「うん、めっちゃ似合う。可愛い」
「へへっ、ありがとう」
なんて、照れもせずに言うAにため息が出る
可愛い、なんてA意外の女の人には絶対言わないのに、
傍から見たら俺の気持ちなんてバレバレなのに。
当の本人は、そんなのお構いなしにブレスレットを揺らしてニヤニヤしてる
そんな姿を見て、勝手に俺の口角も上がっちゃって
Aの鈍感さなんてどうでもよくなって、可愛いからなんでもいいやなんて思えてくるんだから、そんな俺に自分でも笑っちゃう。
ソファーでぐうたらしながら、インスタをつついていると
なっちゃんのストーリーにはAが写っていて、Aとなっちゃんと慧人のスリーショットに ありがとうございました の文字
「なんかインスタのフォローめっちゃくるんだけど、」
澤「え、今日なっちゃん達と何してたの？」
「踊ってた」
澤「聞いてないんだけど」
「あれ、言わなかったっけ」
なにそれ、なっちゃんずるくね
俺ですら暫くAと踊ってないのに、
「夏輝くん今日泊まってくの？」
澤「うん。泊まってく」
なっちゃんにすら嫉妬してしまう自分が恥ずかしくて、いじけ顔を隠すようにクッションに顔を埋めた
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作者名：まここここ | 作成日時：2023年5月27日 23時
