僅かな歪み�� ページ15
「３８度３分だな」
『うう、』
私を見下ろすエトの顔が怖い。目線を合わせまいとぎりぎりまでシーツを手繰り寄せるのに、彼の大きな手によってあっという間に顔にかけたシーツが退けられる。
伸ばされた手の甲が私の前髪を攫い、額に触れる。温度を計っているのだろう彼の姿をじっと見守るしか出来ないでいた。
――魔宮より生還した私を襲ったのは予想通りの高熱で、彼の熱心な看病で少し下がってきた所であった。
「ったく、俺になにか言うことは？」
『すみませんでしたー』
「……ンと、その“体質”無くさねえと魔宮には二度と行かせないからな」
ぶつぶつと小言を零しつつ部屋を退室する彼に申し訳ない気持ちを残しつつも、頭の半分では懲りていない自分もいた。
彼の言う私の体質は、魔法を使うことで身体に何かしらの異常が出るということだった。まあ、異常と言えば大ごとのように思えるけれど、頭が痛くなったり、身体が怠くなってしまったり、今回のように熱を出してしまったり。普段であれば回復魔法で一発なのだけど、魔法が元で崩した体調は回復魔法でどうにか出来るものではなかった。
『自分に不慣れな回復魔法、使うんじゃなかったかなあ』
ミモザも居たので彼女に託すべきだっただろうか。しかし、魔法を駆使することを後悔していない私もいる。彼らの成長だと言って戦闘を傍観していた罪悪感がない訳ではなかった。二人の大きな傷を見ることで尚更、その気持ちがこみ上げてきて、気付けば身体が動いた。
成長のために見守りたい、しかし、怪我を負ってほしくない。ちぐはぐな感情に左右される自分の行動はどれも反省するべき点なのだろう。
うだうだと考えていれば、枕元に置いてある魔導書が淡い光を帯びていることに気付く。
『キミは私を励ましてくれているんだね』
魔導書の表紙に自分の掌を添わせる。ほんのりと温かいくなる気持ちにうじうじと悩む気持ちは吹き飛んでしまう。
大切な人が傷ついている様子をみて何もしないなんて出来ない。私の行動は自分の気持ちを素直に信じた結果なのだ。首を振って無理矢理反省会を終わらす。今は早く熱を治して現場に立たなければいけない。やるべきことは沢山あるのだ。
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Maho(プロフ) - 神崎さん» はい、ぜひぜひ (2018年9月2日 0時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
神崎(プロフ) - Mahoさん» こちらでもありがとうございます！ 二人とも格好いいですよねー。大好きなキャラです！ これからも絡ませていく予定ですー (2018年9月2日 0時) (レス) id: 5ebc5379b1 (このIDを非表示/違反報告)
Maho(プロフ) - ブック1から一気にここまで読みました。とても面白くてはまりました。個人的にはエトとレオポルドやﾕﾉも好きですがノゼルやウイリアムもカッコイイですね！ (2018年8月31日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
神崎(プロフ) - 香々さん» はじめまして！ ブラクロの作品少ないですよね……。糖分少なめですが、そう言っていただけると嬉しいです。私もウィリアムとノゼル好きです。これからも続きます故、よろしくお願いします。メッセージありがとうございます！ (2018年2月4日 15時) (レス) id: 82f870f677 (このIDを非表示/違反報告)
神崎(プロフ) - ヒナピヨ★さん» はじめまして！ メッセージありがとうございます。一番なんて、恐れ多いです。エトのことまで……重ね重ねありがとうございます。楽しんでいただけたようでなによりです！ これからもよろしくお願いします。 (2018年2月4日 15時) (レス) id: 82f870f677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神崎 | 作成日時：2018年1月19日 11時
