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こんなこと、誰にも言うつもり無かったのに。
言ったところで馬鹿にされるとばかり思っていたのに。
「…いいんじゃないか、それで。」
「……………」
「だけど、運命は変えられるぞ。」
「えっ。」
そう言ったイザワカズオを見た時。
「ジェイミー。」
まるで夢から醒めるように、私は現実に引き戻された。
震える体で、名前の呼ばれた方を見る。
「駄目だろう、命令していないのに。」
傷のせいで細くなった顔がゆっくりと笑う。
「ご、めんなさい、でも。」
「でも?」
だめだ、と思った。
頬に走る激痛と、意識の歪む感覚がまるで他人事のように感じられ、そのまま私は地面に倒れ込んだ。
「言い訳は言うなとあれ程言っただろう?座っていろ。」
机に置いていた本も私と同じように地面に捨てられ、悲しい音を立てる。
「……ごめんなさい。」
今、イザワカズオはどんな顔をしているのだろうか。
夢を見ていた私が現実に戻されて、嘲笑っているだろうか。
私は痛む頬を抑えながら、本を拾い椅子に腰掛ける。
座った後も顔を上げる気にはなれず、ずっと手の甲を見つめていた。
その間、誰かのタバコの臭いが部屋中に広がり、何かをポツポツと打つ音が響いていた。
「これで君も晴れて我々の仲間だ。」
そのマークスの言葉で私はふと顔を上げる。
マークスは何やら紙を隣の人間に渡し、イザワカズオをチラリと一瞥していた。
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きさひろ(プロフ) - 魚占さん» ありがとうございます.*・゚(*º∀º*).゚・*. (2017年5月25日 20時) (レス) id: 8601f45511 (このIDを非表示/違反報告)
魚占 - 次回作も楽しみにしてます (2017年5月25日 20時) (レス) id: cf3d1ff74b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きさひろ | 作成日時:2017年5月17日 18時