book 13 ページ13
イザワカズオは車に乗ってからというもの何か紙に大量の文字が書かれたものを読んでいたかと思うと、それを置き、ぼんやりとしていた。
私はひたすら窓に流れていく景色を見つめていた。
「お前、これからどうするんだ?」
ふとイザワカズオが私に尋ねる。
「これから?」
「ああ。どこかに知り合いとか…」
「いない。イザワカズオが初めての知り合い。」
「元住んでたところとか…」
「スラム街に戻るのは嫌。」
「他に………」
「ない。」
「ああもう!」
イザワカズオが耐えられなくなったように車の中に響く大きな声を出し、私の方を見る。
「じゃあ俺と日本に来るか!?」
「うん。」
「えっ。」
「言ったじゃない、一緒に海を見ようって。
それに。」
私は口の端を上げる。
「イザワカズオと一緒がいいの。」
そう言うと、彼は驚いたように目を見開いてから笑った。
「なんだそれ。」
「本当の事だもの。」
「そっか。あと…伊沢和男じゃなくて、神永でいいよ。」
「カミナガ?」
これが多分本名なのだろう。
詳しいことは分からないが、なんだか少し嬉しいと感じた。
「カミナガと一緒がいいの。」
「はいはい。」
車の窓に大きな何かが浮かんでいるのが写って見えた。
これは確か、船。
「あの船に乗ってニホンに行くの?」
「ん?ああ、そうだな。」
「船、初めて。」
「だろうな。船は海の上を走るんだぞ。」
「そうなの!?」
私は立ち上がろうとしたが、車の天井に思い切り頭をぶつけてしまい、痛みに顔を歪める。
その姿を見てカミナガが吹き出した。
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きさひろ(プロフ) - 魚占さん» ありがとうございます.*・゚(*º∀º*).゚・*. (2017年5月25日 20時) (レス) id: 8601f45511 (このIDを非表示/違反報告)
魚占 - 次回作も楽しみにしてます (2017年5月25日 20時) (レス) id: cf3d1ff74b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きさひろ | 作成日時:2017年5月17日 18時