book 2 ページ2
私は本を閉じ、立ち上がり彼の顔を見上げた。
マークスは口角を上げながら私に手を差し伸べる。
「来い、仕事だ。」
そう言われると、私はこくりと頷き差し伸べられた手を掴む。
この行為は私たちが信頼しているから行うのではない、私がどこかに行かないように手錠を付けることと同じなのだ。
私たちは、信頼していない。
きっもこれからも、私は彼を信用しない。
手を引かれて連れてこられたのは、とある個室。
何やら同じ服を着た人間が、部屋の中央に座って項垂れている背広姿の男を取り囲んでいるように見えた。
「ジェイミーはそこに座っていろ、出番が来たら言う。」
「分かった。」
私は部屋の隅に用意されていた椅子に座り、抱えていた本のページを広げた。
ページいっぱいに描かれた青い何かが、私の目の中に写し込まれる。
その青の中を住処とする何かも同じように描かれていた。
これは、空じゃない。
これは何なのだろう。
誰かに聞こうかと思ったが、この部屋にいる人間は皆、背広の男に夢中だ。
背広の男は酷く疲れた様子で、マークスの言葉に首を振っている。
この男は、何をしたのだろう。
顔の雰囲気からするとこの国の人間ではない。
今まで殺してきた中にもこのような顔立ちの人間はいたはずだ。
どこの国か、私は分かることも出来ないけれど。
すると突然、男の隣に居た人間が乱暴に男の腕の袖を捲し上げ、白い肌を
マークスが何か持っている。
「なに、心配することはない。」
人間に押さえつけられた男がマークスの持つ針のついた何かを見て、驚いた顔をしていた。
「君の優秀さと、国への忠誠心はわかっている。」
あれの中に何が入っているのか、私には分からない。
だけど、私はそれを彼に刺してはいけないということだけが本能的に分かった。
思わず立ち上がり、やめてと叫びたかったが。
そうする前に、彼の肌に針はもう刺さってしまっていた。
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きさひろ(プロフ) - 魚占さん» ありがとうございます.*・゚(*º∀º*).゚・*. (2017年5月25日 20時) (レス) id: 8601f45511 (このIDを非表示/違反報告)
魚占 - 次回作も楽しみにしてます (2017年5月25日 20時) (レス) id: cf3d1ff74b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きさひろ | 作成日時:2017年5月17日 18時